53.三途春千夜 ページ15
.
.
その日の夜
僕の望み通りカーテン越しの花火を見た。
『綺麗』
あの人と、見たかったなぁ。
三途「直接見た方が綺麗だろ」
『これがいいの。カーテン越しの花火は僕の思い出なんだ。』
あの日、堅と一緒に見た花火は忘れもしない。
『ねぇ、部屋の電気消し――…」
三途の方を振り向くと、唇がふさがれた。
…キス、だ。
あまりに突然のことに僕は思わず突き飛ばした。
三途「…部屋の電気な。分かった。消してくる」
いつもと変わらない顔でそう言うと、リモコンを取り部屋を真っ暗にした。
真っ暗になった途端、三途の顔に少し寂しさみたいなものが差した気がした。
気のせいかもしれない。
けど、どうしてもその顔が気がかりだった。
僕は花火の明かりだけを頼りに、三途の服の袖を掴んだ。
『三途、いつもありがとう。』
三途「お前の為じゃない。王の為だ。」
『じゃあ、今日こうやって万次郎に内緒で連れて来てくれたのも？』
三途「……さぁ。黙って花火見てろ」
『んふふ』
笑いかけると、そんな僕の顔を見て目を見開いた。
まるで宇宙人でも見ているかのような顔だ。
三途「……花火、ドラケンと見たんだろ？」
『うん。』
三途「ドラケンが、好き？」
『だいすき。』
カーテンから漏れる光を見つめながらそう答えた。
今だから言える本音。
あの頃は言えなかった言葉だ。
きっと、もう二度と堅には会えないと分かっているから言える言葉だ。
三途「……クスリの時間だ。口開けろ」
『うん』
だけど僕の人生は、僕が誰を想ったって万次郎のものだ。
口を開けると、いつものカプセル剤が舌の上に置かれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
太陽 - みんなが幸せな未来を読んだとき涙が止まりませんでした。本誌もこうなったらいいのに、、、 (2022年6月3日 22時) (
レス) @page39 id: ee08862b1e (このIDを非表示/違反報告)
ひー(比古)(プロフ) - えっ！待って好き！とりあえず好き (2021年9月25日 1時) (レス) @page35 id: f1c378431b (このIDを非表示/違反報告)
こうすけ - 作者さん天才かな？これ程まで自分の好みドストライクなものにはじめで出会いました。ありがとうございます、更新頑張ってください (2021年9月23日 23時) (レス) @page35 id: d00dc0a5fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：平
| 作成日時：2021年9月16日 22時
