群青のヒロイン (ページ3)

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3.出しただけの財布ページ3

「お、まえ…何してくれてんねん」

ビクッ肩が震えたのが自分でもわかった。

聞きなれない関西弁と低い声に、私は完全に怯えてしまった。

「ごっ…ごめんなさいごめんなさい！！」

もう顔を見ることすらできず、ぎゅっと目を瞑ったままひたすら謝る。

さっきまで”イケメン”の一言しかなかった私の脳内は

”やってしまった！”

その一言で埋め尽くされた。

「廉～？なに下級生びびらせてんの？」

先ほどとは違う人の声に、少しだけ目を開けると、

制服をほどよく着崩した茶髪の人がイケメンさんの後ろにいた。

「ちゃうわ。コイツが急にぶつかってきてん。見てやこれ」

「うわっ、なにジュースかけられたの？」

「あのっ！私クリーニング代出します！」

いたたまれなくなり、スクールバックから財布を取り出した。

けれど、茶髪の人が”大丈夫だ”というように私の手を握った。

「あーいいのいいの。こいつバイトしてるし、金あるから」

「で、でも…！」

「ほんとにいいから。それより君可愛いね。彼氏とか居たりすんの？」

「え！？えっと・・・っ」

ぎゅっと優しく手を握られ、慌てふためくことしかできない。

イケメンさんにチラチラ視線を送るが、制服のシミを気にしたようにずっとネクタイをいじっている。

再び戻ってくる罪悪感。

「私、やっぱりお金――…」

言いかけたところで、言葉をさえぎられた。

「もうええから。そこどいて、邪魔。勇太行くで」

「ちょっとまってよー。じゃあ君！また今度ね！」

出した財布は開けることもなく用済みになり、ぽつんと取り残された。