群青のヒロイン (ページ15)

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15.悪戯成功ページ15

「先輩っ！おはようございます！」

次の日、新宿駅の前で永瀬先輩を見つけた私は後ろから声をかけてみた。

けれど、返事が返ってくる気配が無い。無視ですか。

永瀬先輩をじとーっと睨んでいると、イヤホンをしているのに気が付いた。

あぁなんだ。音楽聴いていたのか。

「…………」

なんだか、こうやって人の後ろに立っていると悪戯したくなっちゃう。

やっちゃえ。

私は自分より数十センチ高い先輩の耳に届くよう飛び跳ねて、イヤホンを外した。

「うおっ……なんや、お前か」

「おはよーございまーす」

イヤホンを両手に握ったままニヤニヤ顔で挨拶してあげた。

一方、先輩は昨日と同じ呆れ顔。

「朝っぱらから大層な挨拶やな。イヤホン返せ。」

「返せって言われたら返したくなくなっちゃう。そんなことよりいいですよねぇ。家が学校から近い人は。」

先輩の家は新宿駅のすぐ近く。つまり柳林高校からもかなり近い。

素直に羨ましい。

「お前も電車やしそんなに歩くってわけでもないやろ」

「でも電車の時間気にせずに遅くまで寝ていられるじゃないですか！！」

「…あー、なるほどな」

「今日もシフト一緒でしたよね？」

「そうやで。足引っ張んなよ」

「先輩はなんでそういつも一言多いんですかね」

嫌味な視線を露骨に送ってると、「やめろ」と頭を叩かれてしまった。

…あ、笑った

「先輩って意外とよく笑いますよね！」

「意外って失礼やなぁ。毎日快活に過ごしとるやろ」

「どこら辺ですか。自己認識改めたほうがいいですよ。」

「お前には言われたくないわ！」

「あっ！また笑ったー」

「……、だる」

「あ、また仏頂面」

「お前なぁ…」

「へへっ」

昨日の朝にジュースをぶっかけてしまった相手と、次の日にはこんな冗談を言い合えるような仲になるとは思ってもみなかった。

そのまま先輩と中身の無い会話を続けていると、後ろから見覚えのある自転車が隣を横切った。

「あ、瑞稀！」

名前を呼ぶと、その自転車はすぐにブレーキをかけた。

同じクラスで隣の席の男子。井上瑞稀が目を見開いてこちらを振り返った。

「…A、おはよ」

「はよ！」

瑞稀は永瀬先輩をチラリと一瞥した後、再び私に視線を戻した。

「後ろ、乗るか？」

「え！いいの！」

いつもは乗せてくれないくせに

「じゃあ先輩！また放課後！」

「おう」