群青のヒロイン (ページ16)

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16.もしもページ16

「珍しいね。瑞稀が乗せてくれるって」

「別に。気分」

足をぷらぷらさせながら風をあびる。

なんか今日の瑞稀、静か。というより…不機嫌？

「おーい、瑞稀」

「今の奴、彼氏？」

「へ？違うけど…」

「は？ちげーのかよ。んじゃ降りろ」

「えっなんでよ！？」

やっぱり今日の瑞稀…おかしい。

いろいろ言いつつもなんだかんだ学校まで乗せてくれて、靴を履き替えながら興味なさそうに瑞稀は訊いてきた。

「で、誰？さっきの」

「バイト先の先輩だよ」

「…待って、Aバイトとかしてたっけ」

「昨日から入ったの。すぐそこのコンビニだよ」

「あー、あそこのローソンか。」

「いえす！」

「…別にしなくてもいいじゃんバイトなんか」

「お金欲しいんだもん！そういう瑞稀はバイトしないの？」

「しない。俺バスケ一筋。」

「そういやそうだったねぇ。」

瑞稀が持っているエナメルバッグに視線をやる。

…いいなぁ。私も、怪我さえしなければ今頃は――――

「A？ねぇ、聞いてる？」

「えっ、あ、何？」

「どうしたの。ボーっとしてたけど」

「…ちょっと寝不足かも！」

自分でもわかるくらい無理に笑顔を貼り付けて、階段に足を踏み出した。

その時、うまく力が入らずに体が崩れ落ちそうになった。

「っ！あっぶね。Aほんとに大丈夫？」

ぎりぎりで瑞稀が私を受け止めてくれた。

あーあ、情けない。

「ごめんごめん！へーきだよ！ほらはやく教室行こ！」

「…おう」

瑞稀の心配そうな顔を見ないふりして、階段を駆け上った。