34 『凄いこと』 ページ34
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「……。知ってる天井だ」
有名台詞を自己流にした(少女がその台詞を知っている訳ではないのだが)少女は、むくりと寝台から起き上がる。本日二回目であった。
本日ということが分かる訳は、空が夕暮れ時であったからだ。窓には薄く茜が滲んでいる。あの男──榊原に喰らわされた手刀だけで一日以上も気絶することはないと経験則で知っているので、恐らく倒れて五・六時間といった処か。
「あァっ……!! クソ、何なんだあの男」
ずきずきと痛む頭に手をやれば、今朝はなかった包帯が新しく追加されていた。どう考えてもあの男のせいである。後で億倍返しだ、と少女は奥歯を噛みしめた。こいつもこいつでヤバい奴である。
少女はもう一度自分の体を確認した。今朝の病人服のようなものは血だらけになっていたはずだが、今の服はきちんと洗濯されていることが分かる服だ。また誰かが着替えさせてくれたのであろう。
「……一体、誰が?」
唐突だが今更な疑問であった。自分のような孤児を助けてくれる人物──それも相当のお人好しだ。
でも多分、あいつらだろうと少女はあたりをつけた。ギョロ目(煉獄)と蝶々(しのぶ)だ。ちなみに少女の脳内ではカナエは花畑、榊原はクソ野郎である。少女は一応全員の苗字を知っていたが、何となく面倒なので此方のあだなをつけた。
全員何となくで付けた。他の隊員が聞いたら「すげえ合ってる」と感動しそうなあだなであったが。
少女は思考を断ち切り、寝台から足を下ろす。
「あれ……。あら、起きたの?」
よく通る少女の声。少女が出入口へ目を向ければ、そこには交換用の包帯を持って立っている蝶々の姿があった。ご存じ胡蝶しのぶである。
「あ、あぁ」
「それならベッドで寝ていなさい。自分の体の状態を把握できていないんでしょうけど、貴方の体凄いことになってるわよ」
「凄いこと?」
「凄いこと」
一連のやりとりでこいつは俺に説明する気ねえな、と悟った少女は寝台に腰かけるに留める。
しのぶはそんな少女を見て溜め息を吐いたものの、それ以上は言及しようとせずテキパキと動き始めた。
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右腕単純骨折・左腕にヒビ・肩骨損傷・全身打撲(特に背中)・全身擦過傷と裂傷・側頭部の切創。
↑凄いこと。
……マジで少女ちゃん凄すぎじゃない?(困惑) ヤバくない?
書いてる自分が何だけれども、少女ちゃん強すぎィ……。
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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……!皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました!すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください! (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか? (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年3月28日 16時