第百十四夜 兎角。 ページ8
(───やっぱり)
何とか説得して寝せたのはいいものの 癖なのかわからないが抱き着いてくる。それはまあ嬉しいことなのだが 二年前より成長している身体に比例した 背中に当たる柔らかい感触に意識がいき眠れない。
『Aが癖なのか知らんが抱き着いてきたとき首に吐息が掛かって結構元気になった』
『馬鹿なんですか』
夕方の会話を思い出す。あの時はそう返したが確かにそうだ。いや、元気にはなってないがそれもわからんではない。
(うわ……どうしよう)
起こすのも気が引ける。
「……ジャーファル」
名前を呼ばれて慌てて振り返れば 虚ろな目をこちらに向けていた。
「寝ないのか……? やっぱり僕は床で……」
「ちちち、違いますよ! 貴女のせいじゃないです」
いや完璧的に関係無いと言うわけでもないが。
「というか、何で起きてるってわかったんです!?」
「……呼吸」
ジャーファルの視線は完璧にメルレムの豊満に揺れる胸の位置にあった。
「──胸、好きなのか」
その問いに彼は動揺する。
「す、好きではないですよ!!?」
嫌いでも、ないですけど……ね。
「と言うより早く寝なさい。もう随分な真夜中ですよ」
「ジャーファルも同じだろ」
彼女のおかげで随分眠れなくなっているのに、と彼は苦笑しながら彼女の身体を抱き締めた。
心地好かったのか 彼女の瞳がとろんとしてくる。
「……温かい」
「───寝なさい」
頭を軽く撫でれば直ぐに彼女は眠りに落ちた。
この体制ならば胸は当たらないし眠れる。そう思って瞳を閉じれば、彼もゆっくりと夢の中へと入っていった。
──同刻、アンデリパルセウス帝国
Aの眠る部屋の隣に位置するローザの部屋で ローザは月を見上げる。
微かに膨らんだ腹に手を置いて そっと呟いた。
「────馬鹿な人……」
新たな婚約者との間に、子供ができたのだ。それはまだ発覚してから二ヶ月程度しか経っていない。
「……どこまでも愚かで、悲しい人ね……」
彼女はその部屋から出て、Aの元へと向かう。扉を開ければそこには死んだときと何も変わらないAの姿があった。
「──A姫、私は貴女が憎い。どうして……どうしてセラフィル様を殺す必要がお有りだったのですか!!?」
真理は掴めない。
彼女は大粒の涙を大理石の床へポタポタと溢した。
167人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
乙姫(プロフ) - サキさん» 了解です! 有り難う御座います(^^) (2015年6月9日 18時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - 3番がいいです!! (2015年6月9日 16時) (レス) id: 2887baf917 (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - ナウシカ@トラ猫さん» わかりました! 有り難う御座います(^^) (2015年6月8日 22時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - magicさん» 有り難う御座います!頑張ります(`・ω・´) (2015年6月8日 22時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
ナウシカ@トラ猫 - 2か4、もしくは両方を合わせてくださるといいです!頑張ってください! (2015年6月8日 22時) (レス) id: 6b074dcab5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ