第百三十八夜 葛藤。 ページ34
「ワタシは昔からお前が大嫌いネ」
「やっ…!」
暗殺者の瞳で射抜く。華月は苦しみ藻掻く彼女の表情を見てにこりと笑顔を浮かべながら手に更に力を込めた。
彼女の胸元を見ながら華月が舌打ちをする。彼女の胸元に散る紅い痕を見て 彼女の腹部へ膝で蹴りを入れた。
「あ゛ッ……」
「──何でお前ばかり愛されるアルか」
段々と彼女が眠たそうに瞼を下ろす。
「そうアル。お前だけ愛されるなんておかしいネ ワタシの家族を壊して、そんな奴が幸せになんてなれると思うか? あり得ないアル」
彼女がニヤリとメルレムへ視線を向けたその瞬間に、後ろからAとシンドバッドに腕を掴まれて メルレムは地面へ崩れ落ちた。
華月は目を見開いて後ろを振り向く。
「やめろ。私の従者へ手を出すな」
「……何でAチャンまで彼奴を庇うアル」
華月の悲し気な表情に、気持ちが一瞬揺らいだが 咽せ返るメルレムの声に彼女は感情を取り直した。
「どんな理由があろうと、国民は傷付けないで欲しい」
「シン様まで、おかしいアルよ。どうしてワタシは復讐すら許されないネ……!」
彼女の頬を涙が伝う。
「……何で、だと? 貴様、まだ気付かぬか」
「Aチャン……?」
彼女が溜め息を吐きながら腕を組み、華月の視線を引き付けた。
「……ジャーファル殿が 恋人を傷付けた相手を愛せると、思うのか」
「──何をしても 好きになんて、愛してなんてもらえないアル」
シンドバッドが華月の腰を引き寄せる。Aは不満げな瞳でそれを見詰めるが、彼は態とらしく笑った。
「……少なくとも、俺は笑っているサリアの方が人として好きだ」
Aが視線を鋭くしてシンドバッドへ突き刺す。その視線に彼は苦虫を噛んだ様な顔をしたが サリアが何も言わないのを不思議に思い 彼女の方を見ると 彼女は胸元へ縋って泣いていた。
人の恋人の胸でよく泣けるな、とAは若干つまらなそうな瞳で見たが、踞っているメルレムの背中をさする。
「やっぱり、シン様も ジャー様も どっちも素敵アル。大好きネ」
「……シンドバッドは私のものだ、渡さん」
Aの言葉に華月が反応した。
「誰を好きになろうと、勝手アルよ」
彼女が怪訝な顔で眉をピクリと動かす。それを見て 縋られたままのシンドバッドは苦笑いを浮かべる他無かった。
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乙姫(プロフ) - サキさん» 了解です! 有り難う御座います(^^) (2015年6月9日 18時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - 3番がいいです!! (2015年6月9日 16時) (レス) id: 2887baf917 (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - ナウシカ@トラ猫さん» わかりました! 有り難う御座います(^^) (2015年6月8日 22時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - magicさん» 有り難う御座います!頑張ります(`・ω・´) (2015年6月8日 22時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
ナウシカ@トラ猫 - 2か4、もしくは両方を合わせてくださるといいです!頑張ってください! (2015年6月8日 22時) (レス) id: 6b074dcab5 (このIDを非表示/違反報告)
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