【マギ】第一級特異点。四駑[シンドバッド] (ページ29)

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第百三十三夜　刺囓。ページ29

「うわあぁああぁ!!」

　殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

「許さない……お前ら全員……殺してやる」

　トン、トン、と彼女が足先でステップを刻む。軽く跳び跳ねて、準備は終わりだと言わんばかりに彼女が宙を舞った。
　音も無く着地した彼女は視線を男達に向ける。指をバキッと鳴らせば、それと同時に爪が長く尖った。

「言った筈。孫子の代まで許しはしないって」

　足音を立てずに彼女が向かっていく。一人の男の胸元へ爪を突き立てると、腰が抜けたのかへたりと座り込むのが見えた。
　他の男達も同様に崩れ落ちる。

「……あんなに大口叩いて、その様……情けない」

　彼女が無表情で男の首を掴み持ち上げた。

「ひいぃい!!!! た、助けてくれ、許してくれ……！そ、そうだ、金！金はあげますから!!」
「金なんて要らない」

　ワタシが欲しているのは……

　血飛沫が舞う。男の身体が落ち、首だけが彼女の手中に残った。

「次は……お前だ」

　手を伸ばした先には怯えた表情の男性。そして、彼女はもう片方の腕で一人の男性の首をへし折った。痛みに嘆く隙もなく、魂は主に帰す。

「……」

　そんな殺伐とした空気の中、部屋の奥からドンドンと大きな音がした。

「……誰アル」

　扉を開けると、大量の蟲に埋め尽くされた見るも無惨な部屋に、十数人の女性が猿轡を噛まされて怯えていた。

「ッ……今、助けるネ!!」

　ワタシの手を掴んでヨ

　一人一人に手を伸ばすが、皆怯えているのか手を伸ばさない。見たところ手枷は付けられていなかった。

「何でアル!? 出たくないのか!?」
「……『華月』。それ以上問うても無駄でしょう」

　ジャーファルが眷属器を投げて、紐で数人を括り持ち上げる。

「流石アルなぁ、惚れ惚れするアル」
「そうですか。王宮へ帰りますよ」

　その人達を連れてか？

「いえ、この方達には正当な施設へ行ってもらいます」
「ワタシも手伝うネ」

　彼女は掌から手品の様に紐を出すと、それを自在に操る。何人もを括り、彼女がぐいっと引っ張れば女性達は彼女の腕の中に納まった。

「もう、大丈夫アルよ」

　にこりと微笑む。

「ところで、施設ってどこアル」
「まあ、ついてきてください」

　彼が華月に手を伸ばし、斬れてしまった髪の毛へ触れた。