【マギ】第一級特異点。四駑[シンドバッド] (ページ28)

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第百三十二夜　仮構。ページ28

「中々手入れしてるね、お姉さん」

　彼女の髪を箱に入れる。そして彼女の装飾品は全て剥ぎ取られた。

「お姉さんいいの付けてるね、ありがとね」

　彼女はただ何処か宙を見つめる。暗殺者として、従者として生きるのは楽しかった。だけど隷属にだけは、なりたくない。
　そんなの、死んでいるのも同然である。

「……殺せヨ」

　その言葉に男達が顔を引き攣らせた。

「ヤバいぜ、こいつ頭イッてやがる」

　彼女は男達の会話に僅かに納得する。

(ああ……イッてるネ。そんなの解りきってたヨ
だけどワタシ、それでも……
ジャー様との約束が大切ヨ)

　身体の上に男達数人が乗り上げてくる為、彼女は小さく言葉を漏らした。

「……ワタシの身体、傷だらけネ。こんなの、ジャー様に見られたくないヨ……」

　一人の男の手が胸元へ伸ばされる。彼女はこのまま殺してくれればいいのに、と瞳を閉じた。
　隷属になれば、こんな事よりももっと悲惨で凄まじい仕打ちが待っている。それを考えればこんなの微かな出来事だ。
　彼女はジャーファルの顔を思い浮かべる。

(こんなの……ワタシのプライドが許さないネ。
でもジャー様との約束を破るのは……もっと、許せないアル)

　男の一人が声を掛けてきた。

「……市場に着いたら、皆で金を掛けて争うんだぜ。服を全部脱がされて、金を掛けられて、それからは一生誰かの元で働くんだ」
「──それが、どうしたアル」

　生意気な口を聞くな、と再度殴られる。頬が切れて、口に血腥い味が広がった。
　彼女はその時、瞳のみで男を睨み付ける。

「……許さない
　お前ら皆恨んでやる
　孫子の代まで
　お前ら全員、呪ってやる」

　男達は笑った。

「……好きにするがいいヨ」

　次の瞬間男の首が飛んだ。

「……私の仲間に手を出すな」

「──来てくれたアルか、ジャー様……」

　おかしいと思ったんです。

「こんな時間まで何をしているのかと。それに……何故抵抗しなかったんです」
「……ジャー様と約束したアル。傷付けないように、って」

　そうですか。ならば貴女の思い違いですね。
　何故ならば此奴らは国民ではない。

「──鍵を出せ」
「ジャー様……ワタシ、こんな屈辱初めてだったネ」
「……よろしい。思う存分暴れなさい」

　彼女は目を見開いて、狂喜に塗れた顔をした。