第百二十六夜 運命。 ページ21
──あれから数時間の説得の末、Aを何とか納得することができた。
「……やはり、無理だ。私は……」
「襲うぞ」
「……」
この様に半ば強引に丸め込んでいる。彼女はそうでもしないと直ぐに逃げ出しそうな状況にあった。自分のせいで国の王が死にかけたと知れば当然周りの視線は冷たい。
そうなるのが目に見えていたから彼女は廊下へ出るのを戸惑い、彼に必死に抵抗する。
だけど、そんな抵抗も虚しく彼に抱き抱えられれば身動きは取れなくなった。
「大丈夫だ」
そう言って彼は扉を開ける。閉ざされた瞳は彼女の覚悟を表していたが、彼女が思い描いていたような声は聞こえることは無く、彼女の姿を見て喜びの声が上がった。
「おお、生きておられたんですね!!」
伸ばされた手に少し戸惑うも、彼女はその手を握り返す。
「……なんちゃって」
そう言われて不思議に思い彼女は手を握った先の女性を見た。
「私だよ、Aたん!」
透き通る様な声に、彼女は懐かしさと愛おしさを覚えて、目の前にいるピスティの体を力一杯抱き締める。
痛いよ、なんて軽く怒られたが 彼女はそれを気にせずに強く抱き締めた。
「会いたかったんだよ!」
「……っ」
「はい、Aたん!」
ふわ、と軽い感覚が頭に走る。どうしたものかと思いながらも彼女が手を伸ばすと、色とりどりの花で編まれた花冠が落ちる。
彼女がピスティを見ると、ピスティは満開の笑顔を見せた。
「もう花冠編めるようになったよ! ありがとう!」
「……ああ。構わないさ…っ!」
涙が溢れそうになるのを堪えて、震える声でそう告げる。
必死に涙を堪えるあまり、呼吸が荒い。それを悟ってかシンドバッドはAの肩を抱いた。
「……他の皆の所にも、行ってあげてよ。皆Aたんが来るの待ってると思うなあ!」
「それもそうだな。行こうか、A」
彼女は何も言わずに彼の後ろをついていく。
「……どうも」
マスルールが静かに言うと、Aは顔を上げて「ああ」と答えた。
マスルールは彼女の方をまじまじと見る。何かあるのかと彼女は首を傾げるが、彼は何も言わない。何なのだろうかと問いかけようとした時に、彼が口を開く。
「──服、小さいんじゃないスか? 太股の辺りとか……」
「言われてみればそうだな……結構際どい……いやこれはこれでそそるものが……」
シンドバッドの反応に彼女は無言で彼の足を踏んだ。
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乙姫(プロフ) - サキさん» 了解です! 有り難う御座います(^^) (2015年6月9日 18時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - 3番がいいです!! (2015年6月9日 16時) (レス) id: 2887baf917 (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - ナウシカ@トラ猫さん» わかりました! 有り難う御座います(^^) (2015年6月8日 22時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - magicさん» 有り難う御座います!頑張ります(`・ω・´) (2015年6月8日 22時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
ナウシカ@トラ猫 - 2か4、もしくは両方を合わせてくださるといいです!頑張ってください! (2015年6月8日 22時) (レス) id: 6b074dcab5 (このIDを非表示/違反報告)
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