【マギ】第一級特異点。四駑[シンドバッド] (ページ18)

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第百二十三夜　話合。ページ18

「……と、その前に。ご存じと思いますけれど……私はアンデリパルセウス帝国第四代皇帝のローザと申しますわ。船での件に至ってはお礼を申し上げます」

　庇ったときのあれか、とシンドバッドが独りでに頷く。ジャーファルはクロゼットから羽織を出してシンドバッドの肩に掛け、深々と礼をすると部屋から出ていこうとした。それをローザが呼び止める。

「貴方にも聞いていてほしいの。どうやらこの国の政治を主に動かすのは貴方のようだし……」

　その言葉にジャーファルは暫く考えた後に小さく頷くと、シンドバッドの側に佇んだ。

「──その方が目覚めてしまった以上、私は皇位を降りなければなりません。それはおわかりですわね？」
「ああ。そうなるな」

　Aを力尽くで押し退けて、起きてないかと心配に思ったが相も変わらず安らかな顔で眠っている。ジャーファルはそれを見て、手に持っていた服をシンドバッドに手渡した。

「……身なりが整いましたらお声かけくださいまし」

　ローザがそう言って部屋から出ていく。

「──シン、私が居る意味はあるのでしょうか」
「あのお嬢さんがいてほしいと言うんだ、いてやれ」

　金属器を身に纏えば、いつも通りの服装に整った。扉を開けて、「失礼しました」と微笑みながら彼女をエスコートする。

「……何の話だったかしら……ああ、皇位の話でしたわね。……もしA殿が皇位を継ぐというのならば、それは今厳しいわ。厳密に言えば、貴方との関係を続けながら皇帝の座へ、というのがね」

　そこまで見据えていたか、とジャーファルは内心感心した。
　シンドバッドの口から予想外の言葉が出る。

「……俺は、Aに貴国の皇帝の座を継がせる気は毛頭無い」
「……!? 貴方……何を言い出すの!?」

　言った通りだ、と彼の眼力に訴えかけられた。

「……この人は正統な血族なのよ！」
「現在は貴女が皇帝なのだろう？ならば貴女次第でどうにでもできるはずだ」

　理屈を並べ立てるシンドバッドに、ローザが食い掛かる。

「貴殿は己の恋情などの都合で他国の皇帝を無下になさるおつもりなのかしら!!? そんなのは許されるはずがございません!!」
「ならば聞くが、貴女は自分が傷つけた……病み上がりでどんな者に体を乗っ取られているかもわからない、そんな人物を無理にでも皇帝に押し上げるつもりか？こうなったのは貴女のせいだと言っても過言ではない」

　彼は彼女の体を抱いた。

「俺はこいつを手放す気はない」