【派生作品】演技派男子の不幸録

不幸その5　役とシノ ページ6

小さい頃、ぼくは内気だった。

人前に出るのがどうにも苦手で、いつも両親や弟の後ろに隠れていた。

あ、発作？はそのころからあったよ。

もっと静かな発作だったけど。




でも、ぼくは歌うことだけは誰かに見られていてもできた。

その歌の世界に入り込んで別人になってしまうから、歌を歌っていれば自分のことなんて忘れられたから。




「シノ、舞台にたってみない？」

6歳くらいのころに母さんにそう提案されて、近所の小さなミュージカルの舞台にたった。

そのとき舞台から見えた景色はぼくが思い描いていたものとは違っていた。

観客はたくさんいたのに、ぼくの目にはその舞台の景色しか映らなかった。

いや、観客さえも舞台の一部に見えた。



そのとき気付いたんだ。

ぼくは、何かを演じることが好きなんだって。

誰かになりきることが得意なんだって。



11歳にはガラルの有名な劇団に留学させてもらった。

そこはなんかいっつも

「ピンク！ピンク！」

連呼してるくせに、自分は紫好きだとかいう意味わからん変なば……お姉さんが劇団長を務める世界有数の劇団。

ぼくは所詮留学生だから直接指導してもらうなんてことは叶わなかったけれど、その人の舞台はとても勉強になった。



強烈な個性を舞台に馴染ませて、世界観を壊さずに自分を出す。



それは、ぼくにはない演技法で。

まぁ……まず個性がなかったんだけど…。

ぼくはそれから何度も何度も舞台を見て、徐々に個性を学んでいった。

軽く200回は見たっけ……。

留学の期間は1年くらいだったから、ほとんど毎日見てたんだと思う。



ヤバいやつといえばヤバいやつだけど……これくらい狂ってないと舞台とか芸術関係はできないんじゃないな。


まぁ！個性学びすぎて、発作が危ない方向に進化したけどね!!
　
　
　

不幸その6　理科の授業がある日【ライズさん】→←不幸その4　からっとした日　【同上】

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