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Blutige Vergangenheit8 ページ16

ファーランたちと別れ、根城に帰っている間、二人は終始無言だった。Aは、先ほどの感染者の苦しみを、どう和らげるか。アバロンは何か深刻な顔をしていた。

「…なぁ、A」
「なに」
「俺…親父を一人で地上に行かせられないんだ。あと一年たったら…俺…地上に行く」
「そう…よかったな」
「…たのむ。一緒に来てくれ」

アバロンは、最後の頼みとばかりに頼んだ。それでもAは頭を横に振った。

「…できない」
「…どうしてもか?」
「…できない…地上なら医者はたくさんいる。でも、ここには医者は少ない。そんな中、僕がいなくなったら多くの人が困る。だから…いけない」
「…そうか」

アバロンの顔は、悲しみにあふれた。Aも、寂しげな顔になった。

「一年…か」
「あぁ」
「地上に行っても、会えるよな?」
「…おう!」
「…約束だ!」
「あぁ!」

二人はにっこりと笑って、いつも通りの生活に戻った。

「なぁA…そういえば、一人称『僕』だっけか」
「あぁ…まぁな」
「いつのまにか、生き生きとしたしゃべり方になったな」
「そうか?」
「あぁ…なんなら、護身用で武器の使い方ぐらい覚えたほうがいいかもな」
「武器?」
「そうだ。ナイフとか弓とかな。Aは弓のがよさそうだな」
「弓…こんなとこにあるのか?」
「作るんだ」
「どうやって」
「なんでもいいんだ。竹のものを拾ってきて糸を張るんだ。矢は適当に細い棒でいい。俺が用意するから待っとけ!」

なぜか張り切ってアバロンが出ていったため、Aは仕方なく食事の準備を始めた。アバロンが帰ってくるころには料理は完成していた。

「おー!いい匂い!」
「…すごい」
「だろ?俺、一応弓矢得意なんだよね」
「へぇ」
「飯食ったら練習するぞ!」
「うん」

急いで食事をし、二人は外の少し広い場所にいた。

「いいか?よくみとけよ。あの的の赤い場所を、よーく狙って…」
《パシュッ》
「こんな感じだ」
「わかった」
「まぁ、一発でできるほど甘くはな《パシュッ》…へ?」
「これでいいのか?」
「…すげぇ」

アバロンが言ったことすべてを吸収し、確実に成長していったA。できれば使わないようにしたいが、使うときはすぐに訪れた。

「よう、姉ちゃん。死にたくなかったらこっちにきな」
「…」

たまたまアバロンが離れたすきに男に声をかけられた。背中には、アバロンが作った弓がかかっていた。

「いかないし、死なない」
「へえ、自信あるの?」

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カナタ - ページ25の力強いな、が、血からになっています (2017年6月14日 17時) (レス) id: f50bbbd9e0 (このIDを非表示/違反報告)
ミカサ - 面白い…更新した。 (2017年6月2日 0時) (レス) id: aea40fe94e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:御煉 | 作成日時:2015年9月3日 23時

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