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とりあえず。 ページ18

はじめは、周りの誰かの恐怖心やら何やらがうつってしまったのかと思っていた。だって、彼女があまりにも無表情でいるから。
でも。
(ああ、また犠牲者が…)
この近くを通る人々が、ある距離まで来た瞬間、倒れそうな顔色になって去っていく。
間違いない。
この子のが広がっている。
っていうか、いつもはせいぜい2メートルくらいしか効果がないくせに、今日はやたら広い。通りすがりの人はそうでもないけど、同じ列に並んでいる人のほとんどが…大体、半径7〜8メートルくらいの人たちが、皆同じ顔になっている。何だこのすごい力。
『交わす』は基本的に誰にでも効くけど、あまりにも対象とハヅキちゃんの持つべき意識に齟齬があったり、意思が、有り体に言えば『我』が強い人だったりした場合は、すぐに自分の意識を取り戻してしまう。
けど、今日は本当に『誰彼構わず』といった様子だ。
同じ条件下にいる相手は、いつもより広範囲に、しかも強く効果があるのかもしれない。いやあ、新発見だ。うん、すごーい。

などと頭の中で喋り倒しているのだけれど、当の『能力者』が隣にいる僕も当然、対象な訳で。

…何これめちゃくちゃ怖い。

え、ちょっと本当に。能力があって良かった。
よくまあこの子はこんな無表情を保っていられるものだ。
「…あの、ハヅキちゃん。もし無理なら、やめておこうか?」
「何言ってるんですか大丈夫ですよ」
僕が大丈夫じゃないんだってば…って言うか君も大丈夫じゃないでしょ。
普段は何にも興味ありません、というような顔をしているくせに、たまに感情を見せたかと思えば妙に意地っ張りだったりして、子供のようで。
…はっきり言おう、時々すごく面倒な子なのだ。
さてどうしたものか…と、思っていたら。

「おい!人が倒れたぞ!」
「ねえ、大丈夫?どうしたの!?」

…うわ。
気がつくと、周りは阿鼻叫喚一歩手前だった。
「…よし、ハヅキちゃん!別のに行こうか!」
「いえ、でも」
「これよく見たらけっこう怖そうだしさ!やめておこう!」
「私は大丈夫で」
「実は僕が大丈夫じゃないんだよ!お願い!どうしても!」
無理矢理腕を引っ張れば、無表情が明らかに安堵の雰囲気のそれになった。すたすたと歩き出す。
「カノさんがそこまで言うなら、仕方ないです」
「…うん、ありがとー」

本当に、子供みたいな…放っておけない子だ。

慌ただしい。→←真っ青な。



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ユキ(プロフ) - 最終更新日から4年ちょっと過ぎてしまっていますが、この続きを書いて頂けませんか?どうかよろしくお願いいたします! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 710a3a49b7 (このIDを非表示/違反報告)
霜奈(プロフ) - 酒牙亜さん» コメントありがとうございます!こんな…もはや『恋愛』なのか『サスペンス(?)』なのか分からないようなものなのに…本当にありがとうございます!頑張ります! (2017年9月4日 17時) (レス) id: 2732718bb3 (このIDを非表示/違反報告)
酒牙亜 - 更新頑張ってくださーい!待ってますから!(*´ω`*) (2017年9月4日 16時) (レス) id: d72b2da870 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜奈 | 作成日時:2017年5月15日 15時

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