第299夜 ページ19
ーNosideー
イスナーンという男は旅をしていたが、風雅を気に入り長く滞在していたという。
そんな中、彼は皇太子としてツクヨミを支持していたそうだった。
だがツクヨミは弟に負け、皇宮から居場所を失った。
ツクヨミは自分を支持していたという彼に少し申し訳なく感じ、彼の話に耳を傾けるようになっていた。
…それがその男の狙いだということに気付けずに。
彼はツクヨミにこう話した。
スオウが変わってしまったのも、2人が殺し合いの試合をしたことも、ツクヨミが魔導士でないことも、全て運命のせいである、と。
ツクヨミは冗談半分に聞いていた。
宗教的な話だと思い、本気にはしていなかった。
だが、繰り返し話を聞くごとに、その話を信じるようになっていた。
…ツクヨミが魔導士であれば、イスナーンが一体自分に何をしてるのか気付けただろう。
魔導士であれば、防ぐことができただろう。
そうではない彼に予想できただろうか。
その男の声に、精神魔法がかけられていたことを。
決して強力なものではなかった。
ただ、話に耳を傾けるように、その話がしっかり頭にこびりつくように。
そんな魔法がかけられていたことを。
男の話を完全に信じ切るようになった頃には、ツクヨミはもう以前のような明るさは消え、運命に対し憎しみを持つようになっていた。
そして、男はこの運命という名の呪縛から逃れる方法を教えた。
それはスオウを殺す、というものだった。
馬鹿げている。
馬鹿げているが、ツクヨミは正しいと感じてしまった。
運命がスオウに味方をするのならば、その運命をねじ伏せればいい、と。
そして、男はツクヨミに力を与えた。
黒い刀だった。
男は、それはまだ未完成品だが、貴方なら上手く使えるだろう、と言い、それをツクヨミに渡した。
ツクヨミは迷わず受け取った。
その刀が己の人生を狂わせるものだとも知らずに。
そして、ツクヨミはその日の夜にすぐさま行動に出た。
皆が寝静まった夜中、ツクヨミはスオウの部屋に忍び込んだ。
だが、スオウは起きていた。
眠れずに、ぼんやりと書物に目を滑らせていた。
窓から入り込んできたツクヨミの姿を見て、スオウは固まった。
そんなスオウに目もくれず、ツクヨミは刀を抜いた。
途端、溢れ出した黒いルフを見て、スオウは呆然とした。
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北狐(プロフ) - ユメさん» コメントありがとうございます!そうなんですか!!そうなんですか!!もちろんですよー!!(*´>ω<) (2021年7月2日 12時) (レス) id: 77f9ebe255 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ - めっちゃ面白かった!北狐さん!私もマギ好きなんです!もしよければ友達になってくれませんか? (2021年7月2日 9時) (レス) id: c40c3ba588 (このIDを非表示/違反報告)
北狐(プロフ) - なこぞうさん» コメントありがとうございます!えええっ、嬉しいです…!pixiv版では内容少し変わってくると思います…!向こうは更新ゆっくりかと思いますが、そちらもぜひよろしくお願いします! (2021年6月7日 21時) (レス) id: 77f9ebe255 (このIDを非表示/違反報告)
なこぞう(プロフ) - はじめまして!なこぞうと申します!pixivからきました!ものすごく面白くてリメイク版の方ですが一気読みしてしまいました(汗)更新頑張ってください!応援してます! (2021年6月7日 13時) (レス) id: 55f0d7c163 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:北狐 | 作成日時:2021年4月26日 22時