第295夜 ページ15
ーNosideー
カンッという乾いた音が響き渡り、一本の木刀が宙を舞った。
その直後、1人の金髪の女性がどすんと尻餅をついた。
「参りましたわ、ツクヨミ…。
貴方、本当に強くなりましたね…!」
そう言う女性に、ツクヨミと呼ばれた銀髪の男性が手を差し伸べた。
「まぁな。
俺は魔導士じゃねぇから、剣でだけは誰にも負けるわけにはいかねぇだろ、姉さん」
そう言い、ツクヨミは明るくニカッと微笑んだ。
当時の彼は、風雅の皇族の中に数年ぶりに生まれた非魔導士だった。
周囲の態度もあまりいいものとは言えなかったが、彼の明るい性格に惹かれ、支持するものも少なくはなかった。
そして、その支持に値するほどの剣術を身につけていた。
風雅の皇族は魔法も剣術も、その両方の訓練を受け身につけるのが習わしだったが、その中でも最も剣術の才があると言っても過言ではないほどだった。
ツクヨミの手に助け起こされ、立ち上がった女性、アマテラスはツクヨミの口調を聞いてまぁ、と声を漏らす。
「いけませんよ、ツクヨミ。
そのような乱暴な話し方をしていては、また父上たちから叱られます」
「いーんだよそんなの、本人たちの前でちゃんとやればいいんだから!」
そう話す彼は、実は何度もこっそり王宮から抜け出して下町に遊びに行く癖がついていた。
その口調も、下町の子供達と遊んだ時にうつってしまったものだった。
「まったく、ツクヨミったら…!
私は注意しましたからね!」
ムスッと頬を膨らませるアマテラスだったが、またツクヨミは楽しそうに笑いながら、
「でも姉さんは優しいから黙っててくれるんだろ?」
と言った。
図星だったのか、アマテラスは何か言い返そうとしたのだが、呆れたようにため息をついた。
そこへ。
「兄上、姉上〜!」
と2人を呼びながら、ツクヨミよりも少し小さい銀髪の少年が駆け寄ってきた。
「あれ、スオウじゃねぇか。
さっきお前の先生が部屋に向かってるの見かけたけど…」
「抜け出してきました!
僕も兄上のような剣術を身に付けたくて…!」
と、短い木刀を片手に、目をキラキラとさせながらそう言った。
「…全くしょうがねぇなー!」
スオウと呼ばれた弟の言葉は満更でもなかったようで、嬉しそうにスオウの頭を撫でた。
…過去のツクヨミは、現在の彼からは想像もできないほど、明るく優しく、家族想いな青年だった。
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北狐(プロフ) - ユメさん» コメントありがとうございます!そうなんですか!!そうなんですか!!もちろんですよー!!(*´>ω<) (2021年7月2日 12時) (レス) id: 77f9ebe255 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ - めっちゃ面白かった!北狐さん!私もマギ好きなんです!もしよければ友達になってくれませんか? (2021年7月2日 9時) (レス) id: c40c3ba588 (このIDを非表示/違反報告)
北狐(プロフ) - なこぞうさん» コメントありがとうございます!えええっ、嬉しいです…!pixiv版では内容少し変わってくると思います…!向こうは更新ゆっくりかと思いますが、そちらもぜひよろしくお願いします! (2021年6月7日 21時) (レス) id: 77f9ebe255 (このIDを非表示/違反報告)
なこぞう(プロフ) - はじめまして!なこぞうと申します!pixivからきました!ものすごく面白くてリメイク版の方ですが一気読みしてしまいました(汗)更新頑張ってください!応援してます! (2021年6月7日 13時) (レス) id: 55f0d7c163 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:北狐 | 作成日時:2021年4月26日 22時