47/最っ高のおめかし ページ47
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どちらの鈴もボロボロだった。
飛脚の男性がふくよかだったからか、鈴が脆かったのか。どちらにしろもうプレゼント出来るような状態ではない。
桂の方の鈴は真っ二つ。
高杉の方の鈴も真っ二つ。
辛うじて生きていたのは片割れにころりと繋がる、赤色の紐のみ。
「………」
「………」
今にも魂が抜け落ちそうな二人。
その場から微動だにせず影のかかった暗い顔で、込めた想いごとボロボロに潰された残骸を見つめている。
もう喧嘩どころではなくなってしまった。
道行く人が、真っ黒な少年二人にチラチラと視線を送る。
(困りました……)
どうしたものかと、松陽は何気なくAを伺う。
そこに誰もいなかった。
右隣に立っていたはずのAはいなかったが、紙袋を背中に乗せて地面に伏せている銀がいた。
Aはいつの間にか、ガラクタと化した物体の前でしゃがんでいた。
「うわぁー。何だこの欠片はー」
棒読み感たっぷりに、高杉と桂の耳をしっかり通るような声を出す。
高杉、桂はのろりと顔を上げた。
「どっちも真っ二つじゃないかー。一つは右の片割れに紐が繋がってて、もう一つは左の片割れに紐が繋がってやがるぅ」
表情一つ変えず伸び伸びと言いながら。
二つの片割れをそっと手にとり、土まみれの表面を自分の着流しで荒々しく拭った。光沢を取り戻した片割れ二つを一瞥し、微笑む。
わざとらしく、閃いたというように「あっ」なんて声を出した。
「これをくっつけて二つの紐を結んでやれば、立派な"一つ"の鈴になるんじゃねーの?」
言いながら、懐から小汚い糸くずを取り出す。
片割れどもの断面を無理やり合わせやって、小汚い糸くずを横巻きに、強引にくっつけた。
仕上げに赤い紐同士を根元の方でちょうちょ結びにすると。
リンっ───。
また、澄み渡った鈴の音がなった。
「お前らさ、何で喧嘩してるか知らないけど」
「「……」」
「こういうきたない鈴はお前らみたいな元お坊ちゃんと、元優等生には似合わないよ」
こういうのはさ、と、鈴を右手に振り返る。
「私みたいな、生粋の
そうして、ニッカリと笑った。
唖然とする高杉、桂を横目に松陽に駆け寄る。
銀のがらくたを、まるでストラップのように帯から垂らす。銀のがらくた。
「Aはおめかしの天才ですね」
「前世はレディー・〇ガだから」
結局、Aをもっと好きになった。
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佑依佳 - 万屋よ永遠なれは書かないんですか (5月8日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
佑依佳 - すごく良かったです。パスワードを教えてくれませんか (4月15日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
LIARPIERROT(プロフ) - こちらの作品のパスワードは作者様が作者ページに掲載してらっしゃいます。確認してからコメントしましょう。 (12月21日 20時) (レス) id: 7068d0a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - 初めて読みました。とても感動して続きを読みたいと思いました。なので続きを読ましていただきたくパスワードを教えてくれないでしょうか?これからも頑張ってください!! (11月19日 15時) (レス) id: fd0a1b2f31 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 続きを読みたいのですが、パスワードを教えてくれませんか? (10月20日 12時) (レス) id: de6a447dfa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸針 | 作成日時:2018年9月21日 23時