04/不器用なものですから ページ4
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「松陽先生ー!」
「先生! 遊ぼうよ!」
「僕にも剣教えて!」
「ダメだよ先生は私たちと!」
───子兎、Aと松陽が出逢ってから月日は流れ、
すっかり賑やかになったこの場所に自分の居場所が無くなりつつあるのでは、なんて危惧しているA。相変わらずマイペースでごろごろべたべたしている白猫(名前はまだない)。
今日も今日とて、可愛い生徒たちに囲まれる松陽先生。
今日も今日とて、一人と一匹、縁側で死んだように眠りこけている子兎。白猫。
「みんな押さないで、全部いっぺんには無理なので順番にしましょうね」
はーい! 元気な声を揃える生徒たち。
「……ふんっ」
松陽に素敵な名前を貰ってから、松下村塾が出来上がってから、自分以外の子供たちが松陽先生の周りに集まり始めてから、白猫が甘い物を好みだしてから、Aは何だか満たされない日々を過していた。
前に比べて松陽がかまってくれない。一日に交わす会話の量もどっと減った。
何より、名前をあんまり呼んでくれない。
何より、
「松陽先生、ゆかりが作ったんだよこれ!」
「ほぉ、綺麗ですね。買い取りたいくらいです」
「えへへー」
何より、女子人気がめっちゃ高い。
そう、Aはヤキモチを妬いていた。
「にゃ、にゃにゃ、にゃぁん」
「うるさい。猫にはわからねーよ」
「にゃっ」
「メス猫と目が合ったとかそれ自分で言ってて恥ずかしくないの」
「ぬにゃァァァ」
「ちょっ、と! いきなり飛びつくなバカ猫ォ!」
不毛な争いを賑やかな群れとは離れた場所で繰り広げる一人と一匹。
それに目を向けるものは誰もいない。みんながみんな松陽と楽しそうに戯れて───いるわけではなく、一人、Aを見つめている少女がいた。
その少女の後ろにも、目の前の子供たちに手一杯なようで実はずーっとAと白猫の攻防を見守っている松陽も。
「……Aちゃんとお話したいなぁ」
「ぜひぜひ。話しかけてあげてください」
「わっ、先生っ」
「あの子は不器用なだけで、心の中ではみんなと遊びたいと思ってるはずなんです。ですが」
松陽は咳払いを落とし、やんわり子供たちを退けるとAに向かって手を振る。
「A、君も一緒に───」
言い切る前に、ピュンっと姿を消してしまった。
「ね。今回ばかりは私の言葉も届かないらしい」
「先生でもだめなのに、あたしなんか……」
「大丈夫ですよ。何事も適任がありますから」
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佑依佳 - 万屋よ永遠なれは書かないんですか (5月8日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
佑依佳 - すごく良かったです。パスワードを教えてくれませんか (4月15日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
LIARPIERROT(プロフ) - こちらの作品のパスワードは作者様が作者ページに掲載してらっしゃいます。確認してからコメントしましょう。 (12月21日 20時) (レス) id: 7068d0a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - 初めて読みました。とても感動して続きを読みたいと思いました。なので続きを読ましていただきたくパスワードを教えてくれないでしょうか?これからも頑張ってください!! (11月19日 15時) (レス) id: fd0a1b2f31 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 続きを読みたいのですが、パスワードを教えてくれませんか? (10月20日 12時) (レス) id: de6a447dfa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸針 | 作成日時:2018年9月21日 23時