01/白猫は不潔、黒猫は不吉 ページ1
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【銀の芽篇】
「にゃぁ、」
そんなふうに鳴くのは小汚い猫だった。
「…………」
銀髪の少女は、ぶすりとそんな猫を見下ろす。
部下に食事を邪魔されたどこかの国の王様みたいな歪な顔立ちで白い猫をちょっと睨む。
猫はだるそうに半分まで落とされた瞼を一度だけ瞬きしてから、少女の細い脚にすり寄った。
泥のように見えてその実はりんごを頬張っていた少女は、すっかり毒気を抜かれてしまったらしい。
ぶすくれた顔をやめ、やめてと言わんばかりにしゃがみ込む。猫の腹や耳をペちペちと叩いてみたけれど、何故だか離れてくれない。
そんな猫をしつこいと思った。
「にゃん、にゃー」
離れて、離れて、と猫の首根っこを非力につねっていたところ。されるがままだった猫がのそりと身体を起こした。
機敏なのかよく分からないその行動に少女はまた困惑の色を浮かべるが、猫さんはそんなこと気にもとめない。
ぴょいっと、素知らぬ顔で少女の肩に飛び乗った。
びくっと、仏頂面を壊して身体を震わせた少女の頬を柔らかい肉球が叩く。
「にゃいにゃっ」
「………?」
何か訴えているふうな猫のジト目。
また少女もジト目でハテナを頭上に浮かべ、喋れない同士妙な空気が生まれ始めてきた。
が、猫の方にそういう余裕はこれっぽっちも無いらしくて。
「にぅゃー!」
早く歩け!
と少女の後頭部に鋭利な猫パンチを突き入れた。よろり、とよろめきかけた少女だったがすぐさま仏頂面を不機嫌に塗れた睨み顔にかえ、猫を殴───りはしなかった。
バカねこ。
なんて悪態を心の中でこぼすだけにおさめ、森の方へ走ってやった。
「……!」
草木に身を隠したところで、妙な集団が少女の視界に映った。
白いフード、白いマント、白い手袋、白いスーツ、白い革靴で全身を揃えた奇妙としか言いようのない十数人の人間の群れが何かを探すように視線を巡らせているではないか。
まさか、と少女は猫を見やった。
猫は「な、だから言ったろ?」なんて今にも喋り出しそうなドヤ顔で少女の膝を転がっている。
「……」
「んにゃぁ!?」
なにかイラッときてしまった少女は猫の肉球を力いっぱいに握った。
何すんだよ!!
なんて少女ににゃんにゃん喚く猫。
反して相変わらず仏頂面の少女。
「おい、あそこから何か聞こえなかったか」
「!!」
しまった、
後悔した瞬間には少女の足は駆け出していた。
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佑依佳 - 万屋よ永遠なれは書かないんですか (5月8日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
佑依佳 - すごく良かったです。パスワードを教えてくれませんか (4月15日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
LIARPIERROT(プロフ) - こちらの作品のパスワードは作者様が作者ページに掲載してらっしゃいます。確認してからコメントしましょう。 (12月21日 20時) (レス) id: 7068d0a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - 初めて読みました。とても感動して続きを読みたいと思いました。なので続きを読ましていただきたくパスワードを教えてくれないでしょうか?これからも頑張ってください!! (11月19日 15時) (レス) id: fd0a1b2f31 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 続きを読みたいのですが、パスワードを教えてくれませんか? (10月20日 12時) (レス) id: de6a447dfa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸針 | 作成日時:2018年9月21日 23時