【場地圭介】狼さんは孤独がお好き (ページ6)

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｢あ、お前..... ｣

私は今日、とことんついてないんだと思う。

転校初日にも関わらず、学校では派手な女達に話しかけられるし。

引っ越しの挨拶をしようと隣の部屋のチャイムを鳴らせば、出てきたのは今朝絡んできたガリ勉君だし。

なんでお母さんじゃなくてアンタが出てくるんだ、という言葉は飲み込んで、手に持っている紙袋を差し出す。

『.....隣に引っ越してきた柊です』
｢ひいらぎ.....どういう字書くんだ？｣

紙袋ではなく私の手首を掴んで、そう問うてくるガリ勉君。

逃がさねぇぞ？と言うように、痛くはないが女の力では振り解けない、絶妙な加減で握られている。

『.........木へんに、冬です』
｢きへん.....あー、あれか。オレは場地圭介。あ、ちょっと待ってろ｣

彼は私の手首を離すと、家の中に引っ込んでいった。

いっそここで帰ってしまおうかと思ったが、いまだ受け取られない紙袋が可哀想なので残ることにする。

｢わりぃ。これ、オレの名前｣

なんとまぁご丁寧に、自分の名前を書いてきてくれたらしい。

お世辞にも綺麗とは言えない字で書いてある4文字。

“場地圭介”で合っているだろうか。

｢ん、お前の名前｣

紙と鉛筆を渡される。

『.....書けと？』
｢おう｣

.....面倒くさい。

さっさと書いて、紙袋渡して帰ろう。教えれば満足するんでしょう？

『柊、Aです』

自身の名前を書いた紙と鉛筆、それから紙袋を彼に押し付け、私は頭を下げて自分の部屋に逃げ込んだ。