【場地圭介】狼さんは孤独がお好き (ページ24)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:17,223 hit

2 2 話ページ24

圭介君に手を伸ばすも、その手は虚しく空を切った。

鈍い音と、アイツ等の笑い声が聞こえる。

息が苦しい。呼吸をする度に肋が痛む。

多分、折れてはいない。

地面に手をついて上半身を起こせば、砂利が手の平に食い込む。

殴られた頬に触れると、じんわりと熱が伝わってきた。

圭介君はたった1人なのに、あの人数を相手に怯む様子もない。いつになく真剣な顔つきで、拳を振り上げている。

そこで私は、自分が狙われていないことに気がついた。

否、狙おうとしても狙えないのだ。圭介君が、私を庇いながら戦っているから。

今なら.....今なら、逃げられるかもしれない。

足に力を込めた瞬間、圭介君が私の近くにふっ飛ばされてきた。

唇が切れているのか、血が出ている。

彼は何回か咳き込んで、私を自身の後ろに隠した。

｢なんでそこまでして銀狼を守ろうとするかねぇ？もしかして銀狼、東京卍會に入ったとか？｣
｢違ぇよ｣

圭介君は短く答えると、唇の端についている血をやや乱暴に拭った。

｢オレが守りたいから、守ってる｣

そう言って、彼はまた果敢に挑んでいく。

なんで.....？なんで君は、そこまでして私を助けようとするの？

私、関わるなって言ったのに。あんなに冷たくしたのに。

場数を踏んでいたらわかる筈。この人数に1人で立ち向かうのは、どれだけ圭介君が強くても無理だ。

それなのになんで.....

いや、今はそんなことどうでもいい。逃げないと。

そう思うのに足は動いてくれなくて、視線が圭介君に釘付けになってしまう。

.....嗚呼、私はきっと、殴られた衝撃かなんかでおかしくなってるんだ。

髪を縛って、駆け出す。

｢A！？｣
｢あは、流石銀狼｣

ごめん、澪。約束守れなくて。

『圭介君、まだ動けそう？』
｢.....当たり前だろ｣
『そう.....じゃあ私の背中、託すね』

背中を合わせれば、圭介君ってこんなに背高かったっけ、なんて場違いなことを思ってしまう。

『銀狼は、今日限りね』

自分の為だけに戦う柊A。

誰かを守る為に戦う銀狼。

その名を捨てた時に、誰かを守る為に拳を振るうことは二度としないと誓ったんだけど.....今回は、仕方ない。

君を守りたいと、そう思ってしまったから。