七話 ...手... ページ9
ガラガラ、ざわざわ。
今日もここは騒がしい。
私も負けてはいられない。
「どうか、買ってください！」
「お願いします！」
ただひたすらに頭を下げ、声をはりあげる。
あの後、私は市場に頼み込み、何とか売り場を確保する事が出来た。
静かに歩み寄ってくる、男性と女性。
どうやら私の売り物に興味があるようだ。
私はただただ頭を下げた。
「どうぞ、見て行ってください」
「...ふむ、...これが良い。気に入った。これを。」
「あら、なら私はこっちの布にしようかしら。いくら？」
「ありがとうございます！...２分です」
「この出来にしてはずいぶんと安いな、お前が織ったのか？」
「...はい」
「ふうん、手先が器用なのねぇ...あら、傷だらけじゃない！」
「えっと、...慣れてなくて」
「え？もしかして初めて織ったの？」
「はい、そうです」
「あら、すごいじゃない！ありがと、はいこれ２分」
「あ、ありがとうございます...！」
よし、あと一枚。
私は再び声を張り上げた。
「あと少し...」
家路をたどりながら、今日売れた分のお金を数える。
一週間市場に通い詰め、布を売り続けるとあと少しで薬が買えるお金を稼ぐ事が出来た。
早く、早くしないと。
明日にでも薬を買わなければ。
「ただいま...」
「あ...お帰り...」
今日は早かったね、なんて弱弱しく微笑んで私を出迎える彼。
もう立ち上がることなんてできなかった。
「起きてたんですね」
「あぁ、...眠りすぎたみたいだ」
「そう、ですか」
何度も、彼が眠ったまま目を覚まさないんじゃないかと不安になって、眠っている彼の手を握っていることがあった。
すると、ふと目覚めた彼が、手を握り返してくれた。
温かくて、優しくて。
それだけで安心できた。
でも。
「...綺麗な手だね」
そう言いながら私の手を包み込む彼。
傷だらけの手を慈しむように撫でる。
「...っ...いいえ。」
言葉に詰まる。
「綺麗だよ」
なおもそう言って、ね？と私を見る。
私は何も言えなかった。
私の手を優しく握る貴方の手が、日に日に冷たくなっていく。
それが、怖くて仕方なかった。
「？...どうした？」
顔を上げると、彼が私の顔を覗き込んでいた。
なんでもない、と返事をする前に勝手に口が開いた。
「いつか、...綺麗な指が無くなっても...それでも私を愛してくれますか...」
いつかのような質問に、彼は瞳を細めて答えた。
「当たり前、だよ」
涙があふれた。
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近所迷惑さき - とってもいい歌ですよね〜。今でもまだ聴いてます。聞いた時、あれ？これボカロなのか！？とビックリしたので、自己解釈を見て、意味を知りました。 (2022年3月27日 7時) (
レス) id: 51e47c3894 (このIDを非表示/違反報告)
Mirror Sound - 素敵な､物語です！私は､元々｢四季折の羽｣が大好きだったんですけど､この自己解釈を読んでからもっと好きになりました！できれば､違う歌の解釈も沢山書いてほしいです｡ (2016年1月13日 15時) (レス) id: 863d51c1e2 (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - ×××さん» こちらこそ、素敵な作品をありがとうございました。私も貴方の作品が大好きでした。そんな素敵な作品に私のイラストを添えていただけて本当に嬉しかったです。本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 22時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)
×××(プロフ) - こちらに失礼します。度々イラストを描いてくださり、ありがとうございました。あなたの絵が大好きでした。本当に、本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 21時) (レス) id: 9c0f93981b (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - Misakiさん» コメントありがとうございます...!!好きといっていただけてとてもうれしいです。 (2015年2月25日 20時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Yukine. | 作成日時：2014年1月26日 17時
