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二話 ...春... ページ3

少しずつ雪も降らなくなって、だんだん暖かい日が続くようになった。

窓から見える景色も銀世界から草花が芽吹き小鳥が囀る、いかにも春、と思える景色に変わっていく。

一日一日だんだん春が近づいてくる。

私はまだかまだかと春を待った。



朝。

私は外に出ると、空を見上げた。
温かい日差しが私に降り注ぎ、なんだかうれしくなる。

空は青く晴れ渡り、小鳥が春が来たのを喜ぶかのように飛び回る。

私は青く澄み切った空をあおぎ、大きく息を吸い込んだ。


「ららら...」


思いついた旋律を紡ぐ。

小鳥のさえずりが一緒に歌ってくれているようだった。

一羽の小鳥が私に近づいてくる。
私が指を差し出すと小鳥は指にとまった。

そして合わせるように囀り始める。

嬉しくて、さらに大きな声で歌う。

山にまで届いてしまうのではないか、なんて思ってしまうくらいに。


夢中で歌っていると。


「綺麗な声だね」


なんて、後ろから声が聞こえる。

振り返ると、そこにはいつから居たのか彼が藁を編む手を休めて私に言う。

思わず歌うのをやめてしまう。

きっと今の私の顔は真っ赤なんだろう。
恥ずかしい、でもすごく嬉しい。

頬が緩むのを隠せなかった。

「...いつから...」

「君が歌いだした時からね」

「え...」

気付かなかった...とまた一段と熱くなった頬を隠す。

「そうだ、そろそろ疲れたから休憩しようと思うんだけど...」

と、私を呼ぶ。




縁側に座った私の膝に彼が頭を乗せる。

「ありがとう」

と、彼は言い、目を閉じた。

なんだか照れくさい。

なにか話さなくては私は恥ずかしくて座ってられないだろう。


そうだ、何か話題を。

考えを巡らせ、口を開く。


「あの...」

「ん?」

彼が目を開ける。

不覚にも頬が熱くなったが、目を反らす事無く続ける。


「いつか、...いつか綺麗な声が出なくなってもそれでも、...それでも貴方は私を愛してくれますか...?」



一瞬驚いたように目を見開く彼。
真剣な瞳が私を見据えた。


少し間をおいて彼が笑った。
そして口を開く。





「当たり前だよ」






そっと返された言葉に、笑顔に、思わず涙があふれた。

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近所迷惑さき - とってもいい歌ですよね〜。今でもまだ聴いてます。聞いた時、あれ?これボカロなのか!?とビックリしたので、自己解釈を見て、意味を知りました。 (2022年3月27日 7時) (レス) id: 51e47c3894 (このIDを非表示/違反報告)
Mirror Sound - 素敵な、物語です!私は、元々「四季折の羽」が大好きだったんですけど、この自己解釈を読んでからもっと好きになりました!できれば、違う歌の解釈も沢山書いてほしいです。 (2016年1月13日 15時) (レス) id: 863d51c1e2 (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - ×××さん» こちらこそ、素敵な作品をありがとうございました。私も貴方の作品が大好きでした。そんな素敵な作品に私のイラストを添えていただけて本当に嬉しかったです。本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 22時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)
×××(プロフ) - こちらに失礼します。度々イラストを描いてくださり、ありがとうございました。あなたの絵が大好きでした。本当に、本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 21時) (レス) id: 9c0f93981b (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - Misakiさん» コメントありがとうございます...!!好きといっていただけてとてもうれしいです。 (2015年2月25日 20時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Yukine. | 作成日時:2014年1月26日 17時

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