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十一話 ...羽... ページ14

いつか。
いつか、彼に問おうと思っていた言葉。

結局、それも聞けず仕舞いで。
結局、私は彼を救えなくて。
結局、私は一人になって。


もう、涙すら流れない。


私は、再び機織り機の前に座っていた。

ふと、思い出した誓い。


『羽には命の結晶が刻まれている。』

『それを何に使おうが構わない』

『ただし、羽を失ってしまえば命が絶えてしまう』


もう羽なんて、少ししか残っていない。

私にできることなんて、彼に全てを捧ぐ事しかできなかったのに。
もう私には何もない。


私は決めていた。

あの、雪の日。
罠にかかった私を助けてくれた、あの日。
初めて、彼と出会った日。
初めて、...恋に落ちた日。

恩返しをする、彼の為に何でもする。
彼の助けになれれば...。

でも、それとは逆に私は沢山のものをもらった。

優しさをもらった、喜びをもらった。
ぬくもりをもらった、愛情をもらった。

だから、命を削ってでも救おうとした。

でも、間に合わなくて。


残ったのは後悔と、悲しみ。


そっと、羽を抜いて、機を織る。

カタンッ カタカタ

羽を抜く。

機を織る。

カタンッ カタカタ

カタンッ カタカタ

カタンッ カタカタ...









最後。

これを織れば命は絶たれて、私も眠る。


「いつか、私がヒトじゃなくなっても、あなたは、私を愛してくれますか?」


貴方に、蓮に、問いたかった言葉。
臆病で、真実を告げるのを恐れて。
そっと囁いて、機を――――――。


『当たり前だよ』


あぁ。
彼の声が聞こえる。
後ろから抱きしめられて。

これは、幻?
それとも、夢?

ううん、構わない。
それがなんだって。


『僕はまだ覚えてる。』

『とある雪の日、寒い寒い冬の夜。』


私はハッとする。
それって、まさか。


『罠にかかった鶴を助けた。』

『その後、羽ばたいて、どこかへ行ってしまった。』


ポタリ。

枯れていたはずの涙が零れる。


『綺麗に羽ばたいた、あの日の鶴を、ずっと、今でも覚えているよ』


気付いていたんだ。
私がヒトではないことに。


『そして 変わらず君を』





『「愛してるよ」』





光が私を包んだ。

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近所迷惑さき - とってもいい歌ですよね〜。今でもまだ聴いてます。聞いた時、あれ?これボカロなのか!?とビックリしたので、自己解釈を見て、意味を知りました。 (2022年3月27日 7時) (レス) id: 51e47c3894 (このIDを非表示/違反報告)
Mirror Sound - 素敵な、物語です!私は、元々「四季折の羽」が大好きだったんですけど、この自己解釈を読んでからもっと好きになりました!できれば、違う歌の解釈も沢山書いてほしいです。 (2016年1月13日 15時) (レス) id: 863d51c1e2 (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - ×××さん» こちらこそ、素敵な作品をありがとうございました。私も貴方の作品が大好きでした。そんな素敵な作品に私のイラストを添えていただけて本当に嬉しかったです。本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 22時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)
×××(プロフ) - こちらに失礼します。度々イラストを描いてくださり、ありがとうございました。あなたの絵が大好きでした。本当に、本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 21時) (レス) id: 9c0f93981b (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - Misakiさん» コメントありがとうございます...!!好きといっていただけてとてもうれしいです。 (2015年2月25日 20時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Yukine. | 作成日時:2014年1月26日 17時

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