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一話 ...雪... ページ2

...今日はよく冷える。

寂れた村の小さなあばら家。
やっぱり冬の夜は寒い。
冷えた体を寄せ合い、私達は何かを話すでもなく、囲炉裏の炎を見つめていた。


「...今日は冷えるな。」

そっと彼が言う。

「...そうですね。」

私は相変わらず炎を見つめながら答えた。

「寒くないか?」

彼は私の手をさすり、私に問う。
そんな彼を見て、私は微笑んだ。

「いいえ。ちっとも。」

そうか、なんて言いながら目をそらす彼。
心なしか頬が赤い。
炎で火照ってしまったのだろうか。
そんな彼の肩に頭を乗せ、炎に視線を戻す。


貴方が居るだけで、寒さなんて忘れてしまうもの。


さっき言いかけた言葉を心の中で呟き、窓の外を見やる。

「あら、雪が。」

外では、粉雪がちらちらと降っている。
家の中の光があたって、美しくも儚く見えた。

「本当だ、どうりで今日はいつにもまして寒いわけだ。」

彼はそこで一旦言葉を区切り、思い出したように呟く。

「そうだ、君に出会った日もこんな雪の降る日だった。」

そう言って、私を見つめて微笑む。
その笑顔は私の大好きな、優しい笑顔だった。


...そうね、私と貴方が初めて会った日も雪が降っていた。


「そうですね、...貴方が温かく迎えてくれた。」

嬉しかった、温かかった。貴方の優しさが、笑顔が。


――貴方が救ってくれた。
  貴方のおかげで私はこんなにも―――――


ありがとう、と聞こえないように囁く。


「...どういたしまして。」

一瞬驚いた顔をした彼は、ふっと笑って嬉しそうに私の耳元で呟き、そして僕もありがとう、と優しく囁いた。

なんだ、聞こえてしまったか、とやけに恥ずかしくなった私は少しだけ火照った顔を袖で隠す。
恥ずかしがることないのに、と笑った彼はそっと私を抱きしめた。


―――嗚呼、神様。どうか。

どうか、こんな幸せな日々が続きますように。


貴方と居られれば、他は何も要らない。

二話 ...春...→←序章 ...鶴...



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近所迷惑さき - とってもいい歌ですよね〜。今でもまだ聴いてます。聞いた時、あれ?これボカロなのか!?とビックリしたので、自己解釈を見て、意味を知りました。 (2022年3月27日 7時) (レス) id: 51e47c3894 (このIDを非表示/違反報告)
Mirror Sound - 素敵な、物語です!私は、元々「四季折の羽」が大好きだったんですけど、この自己解釈を読んでからもっと好きになりました!できれば、違う歌の解釈も沢山書いてほしいです。 (2016年1月13日 15時) (レス) id: 863d51c1e2 (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - ×××さん» こちらこそ、素敵な作品をありがとうございました。私も貴方の作品が大好きでした。そんな素敵な作品に私のイラストを添えていただけて本当に嬉しかったです。本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 22時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)
×××(プロフ) - こちらに失礼します。度々イラストを描いてくださり、ありがとうございました。あなたの絵が大好きでした。本当に、本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 21時) (レス) id: 9c0f93981b (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - Misakiさん» コメントありがとうございます...!!好きといっていただけてとてもうれしいです。 (2015年2月25日 20時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Yukine. | 作成日時:2014年1月26日 17時

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