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序章 ...鶴... ページ1

「そろそろ帰るか...」

一人、そっとつぶやく。

あたりはうっすらと暗くなってきて、雪もちらちらと降り始めた。

今年の収穫はまあまあだったな。来年もよく実るだろうか。

ようやく一人立ちし、手に入れた畑は小さなものだったが一人で耕すにはなかなか広いもので。
一人試行錯誤して育てた作物は結構いいできだった。
来年も上手く育ってくれるといいが。

そんなことを思いながら家路を急ぐ。
風は冷たく、雪が積もり、あたりを銀色に染める。
今宵はきっと冷えるな、温かい物でも作ろう。

そう思い、足を速めた。

「...お」

思わず足を止める。

もう少しで家に着くという緩やかな坂道。
その真ん中に何か白いものが動いている。
少し歩く速度を上げ、それが何かを確かめた。

「鶴...か...?」

目の前に小柄な鶴がいた。
どうやら罠にかかってしまったらしい。
どうにか逃げようとじたばたと暴れてみるが上手く外れずにただ体力を削っているだけのようだ。
少し可哀想になってくる。
このまま放っておくのは...


「...仕方ないな。」

鶴に近寄り、しゃがみ込む。
驚いたのか、鶴はさらに暴れだした。

「わ、あんまり暴れないでくれ。上手く外れないだろう?」

そんな言葉を理解したのかしていないのか、鶴はおとなしくなった。
その間に罠を外してやる。
輪っか状になった縄に足を引っかけただけで、傷みたいなものは見当たらない。
なんとなく安心した。

「よし、これでいい。」

僕が手を放すと、鶴は足を曲げてみたり、何かを確認するようなしぐさをすると飛び立ってしまった。
どんどんと小さくなる鶴を見守る。


その鶴が飛ぶ姿は優雅で、とても美しかった。

―――忘れられないほどに。

一話 ...雪...→



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近所迷惑さき - とってもいい歌ですよね〜。今でもまだ聴いてます。聞いた時、あれ?これボカロなのか!?とビックリしたので、自己解釈を見て、意味を知りました。 (2022年3月27日 7時) (レス) id: 51e47c3894 (このIDを非表示/違反報告)
Mirror Sound - 素敵な、物語です!私は、元々「四季折の羽」が大好きだったんですけど、この自己解釈を読んでからもっと好きになりました!できれば、違う歌の解釈も沢山書いてほしいです。 (2016年1月13日 15時) (レス) id: 863d51c1e2 (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - ×××さん» こちらこそ、素敵な作品をありがとうございました。私も貴方の作品が大好きでした。そんな素敵な作品に私のイラストを添えていただけて本当に嬉しかったです。本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 22時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)
×××(プロフ) - こちらに失礼します。度々イラストを描いてくださり、ありがとうございました。あなたの絵が大好きでした。本当に、本当にありがとうございました。 (2015年7月14日 21時) (レス) id: 9c0f93981b (このIDを非表示/違反報告)
Yukine.(プロフ) - Misakiさん» コメントありがとうございます...!!好きといっていただけてとてもうれしいです。 (2015年2月25日 20時) (レス) id: dd995b6485 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Yukine. | 作成日時:2014年1月26日 17時

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