40.そういう人 ページ6
オーブンでスポンジ生地を焼いている間、私は大事なことを思い出した。
「花さん、今さらだけど。コンテスト1位だったんですよね？」
「うん、やっとね」
「すごい！おめでとうございます！」
ニノくんも喜んだだろうな、って言いかけて。
雅紀くんがニノくんぼんやりしてるって言ってたことを思い出した。
「最近会ってないんだけど、ニノくん元気ですか？」
「え？カズ？…うん、元気だよ」
「私花さんがうらやましくて。
なんていうか、ニノくんには花さんしかいないって見ていてわかるもん」
花さんにしては珍しく、ちょっと困ったような笑顔を浮かべる。
「うらやましいだなんて、そんな。
私もともと恋愛苦手でね？」
「え⁈」
「ほら職業柄、普通の会社勤めの人とは休みも合わないし。
ずっと仕事が一番で。
だから恋愛しても長続きしなくて」
「でも、ニノくんとはもう長いですよね？」
「もうすぐ5年、かな。
でもそれは相手がカズだから、で。
他の誰でもだめだったと思う」
ふっと目を細める。
「Aちゃんにとっても、雅紀くんはそういう人なんじゃない？」
「そういう人？」
「他の誰かじゃだめな人」
他の誰か？
だめだよ。
代わりなんて、いない。
「私いつも、もらってばっかりだから。
今度は私がカズにあげたい、な」
「あげる？何を？」
「クリスマス…プレゼント」
あ、そういえば。
ケーキのことしか考えてなかったな。
プレゼント、どうしよう。
その後焼きあがったスポンジケーキに、生クリームを平に塗って、苺やラズベリーを飾る。
「すごい、おいしそう！
…やっぱり花さんに頼んでよかった」
「こちらこそ、ありがとう。
初心を思い出したよ」
きっと、当日もうまくいくよ！って花さんに笑顔で見送られて。
家に帰って来ると、もうだいぶ時間は遅かったけれど。
雅紀くんの顔がどうしても見たくなった。
ふと、雅紀くんに借りっぱなしだったストールが目に入る。
ずっと返すの忘れてた。
ちょうどいいや。
これ、持って行こう。
私は紙袋にストールを入れて、立ち上がった。
細い路地を小走りで抜けるころに、時計の針は12時を過ぎて。
もう閉店だから雅紀くん一人かな？と思って、ひょいっと窓をのぞくと。
雅紀くんがマキちゃんを。
抱きしめて、いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1353人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年12月16日 18時
