妖弧、玉藻(七頁) ページ7
妖弧がひろしくんを狙った理由は、人の世に災いをもたらす妖狐族の掟に従い人間に化ける人化の術を完成させるため自分に最も適した髑髏を求め、最適な髑髏の持ち主であるひろしくんに近付いたのだという。
「(でも、良かった…。ひろしくんも鵺野先生も無事で…)」
幸い鵺野先生が勝利を納めてそれは免れた。鵺野先生は大怪我を負ったが命に別状はなく学校にも行けるそうだ。
鵺野先生のことだから大方リツコ先生に会いたいからだと思うが、先生らしい理由に私からは思わず笑みが零れ落ちた。またあの夫婦漫才のような二人が見られるのかと思ったら。
しかし翌日、私の前に目を疑うような光景が飛び込んできた。
「A先生」
「！」
朝礼にて職員室に向かう途中、背後から聞き覚えのある声に思わずゾクリとした。振り向く前に微かに感じる妖気。間違い、ない。
私は思いっきり背後を振り向くと、そこには案の定昨夜鵺野先生が成敗したハズの玉藻先生の姿があった。警戒心にて思わず後退り顔が強張る。
どうして、なんで、という思考ばかりが私の脳内を駆け巡っていた。
「そんなに警戒しないでください。私からは僅かな妖気しか感じられないハズだ。昨夜鵺野先生に敗北してすっかり力を使い果たしてしまいましたから」
「(致命傷を避けて生き延びていたのか…っ)…鵺野先生は貴方がここにいることをご存知なんですか」
「今から挨拶に向かうところだったんですよ。先に貴女が見えたので」
「のこのこ戻って来て…一体また何を企んでるんです？言っておきますけど、また生徒を狙うようなことがあれば鵺野先生は黙ってはいませんよ」
「今度は違います」
違う？それじゃあ、他に何が目的で…と思考を巡らせていると先に玉藻先生の方が口を開いた。
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作者名：紫亜 | 作成日時：2019年10月12日 22時
