それぞれの目的 ページ43
「(まさか生徒の健康診断で学校に来るなんて思わなかったな…)」
５年１組の健康診断の順番が回ってくると私は手に持っていた生徒達の名簿を玉藻先生に手渡した。ここは童守小学校の保健室で玉藻先生は生徒達の健康診断の医師としてやって来ていた。
ただ、目的はそれだけではない気が私の中でヒシヒシとしている。先生の側に置いてある羅針盤のようなものを見てから…。
「玉藻先生…今日は生徒達の健康診断に来られたんですよね？これは一体…」
「貴女には関係の無いことです」
「(か…関係無いときたか…)」
「それより、ここ最近稽古をサボっておいてよくノコノコと私の前に現れてきたものですね」
「それは…っ」
思わず身を乗り出して言いかけた言葉を喉奥にしまい込んだ。そんな私の行動に玉藻先生は凝視していたが、いつものような視線はそこにはない。
私を完全に突き放しているような目だ。玉藻先生と出会った当初を思い出して私の中で更に不安が募る。玉藻先生は何か企んでいる…そう気がしてならなかった。
戸惑う私の視線と鋭い玉藻先生の視線がぶつかる中、暫くして膨れを切らした玉藻先生の方から沈黙が破られた。
「…まあ、いいでしょう。貴女のことだ。ここら辺に起きている奇怪な事件のことをもうご存知でしょう」
「！」
切り出されたのは最近この辺で多発している奇怪な事件のことだった。
被害者のほとんどがマンホールの近くで丸焦げになって発見され、それはまるで落雷にでも遭ったような異様な姿…。
しかもそれは人間が犯したものではない。玉藻先生は既にそのマンホールを調べたのか、私に向ける視線は嘲笑っているようなものだった。嫌な汗が頬を伝い落ちていく。私も調べたがマンホールから感じ取ったのは怨念に近い妖気だったのだ。
「A先生？」
健康診断を行う前に服を脱いでいた生徒達が私から中々声がかからないことを不振に思い保健室の中を覗きながら声をかけてきた。
私は一旦玉藻先生との会話を中断し、慌ててそちらへと向かって行ったのだった。
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作者名：紫亜 | 作成日時：2019年10月12日 22時
