お酒 ページ36
「ちょっと鵺野先生飲み過ぎですよ〜」
「(鵺野先生、全然懲りてないな…)」
おでんの屋台前でゆきめちゃんに抱えられながら酔い潰れている鵺野先生を見てそう思った。
先日、ゆきめちゃんの生理現象にて産まれたゆきべーくん(髪型はゆきめちゃん、顔は鵺野先生にソックリ)の騒動前でもこうして酔い潰れるほど記憶を無くして、ゆきべーくんを見てゆきめちゃんとの間で勘違いしたばかりだと言うのに…。でも、
ゆきめちゃんに抱えられて後にする二人を微笑ましく見送った。石川先生オススメのおでん屋のおでんも本当に美味しかったな。もう夜も遅いし私も帰らなきゃ。
「こんなところで何してるんですか？」
「きゃーッ！！」
背後から突然声をかけられ驚いた私は思わず悲鳴を上げた。慌てて振り返ると突然叫んだ私を見て驚いている玉藻先生が何故かそこにいた。
「た、玉藻先生…！もう、ビックリするじゃないですか！」
「…ビックリしたのは私の方ですよ。人をお化けを見た時みたいに驚かないで頂きたい」
「(人の皮を被った妖怪のクセに…)」
今日は稽古はお休みで鵺野先生達とおでん屋で呑んでいたことを明かすと玉藻先生はやっぱり興味を持たれなかった。だよね、やっぱり妖怪だなぁなんて思っていると今度はジッと私の人間観察が始まる。今度は何を知りたがってるんだろう？
「人間はお酒一つでわざわざ醜態を晒して一体何になるというんですか」
「醜態って…」
「顔が赤くなるぐらい呑んでしまうことにですよ」
すると、突然顎を掬われ上向かされると真面目な顔をして私の顔を覗き込む玉藻先生の顔が瞳に映った。いつもの私ならスケベ妖怪とか言って玉藻先生を突き放すのに、お酒で酔っているせいかそれが出来ない。
いや…人間のことを知ろうとしているこの妖怪のせいだ…。
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作者名：紫亜 | 作成日時：2019年10月12日 22時
