お礼(二頁) ページ33
「先生大変です…！衣装が…っ」
生徒達からそれを聞かされたのはファッションショーが始まる二時間前だった。深刻な表情を浮かべて私の目の前に出されたのが無惨にも引き裂かれたファッションショーの衣装で…。
「高校生の不良の人達にやられたんです…っ。ファッションショーまであと二時間しかないのにどうしよう…！」
「落ち着いて、大丈夫だから。先生がなんとかするわ」
「！、先生…」
生徒達の肩に手を置き安心させる。とにかく急いで作業に取り掛かる必要があった。私は生徒達から衣装を受けとると生徒たちはリハーサルに向かわせ被服室へと急いだ。
絶対間に合わせる。自分の力を信じて到着したミシンに手をかけた。先ほどの生徒たちの表情が頭から離れない。きっと私が拭い取ってみせるから…。
しかし、一時間が経った後だった。ピタリと私の手が止まった。そう、引き裂かれた状態を見た時から私の勘が言っていた。たった二時間で元に戻る状態ではないと。
やはり間に合わないかもしれない…それが脳裏を過り思わず衣装に顔を埋めた。時間が私を追い詰める。
間に合わないなんてそんなこと思ってしまってはいけないのに、生徒たちが待っている、のに…諦めかけていたその時だった。
「諦めるのはまだ早いですよ。A先生」
「！」
聞き慣れた声が聞こえてきてハッとなった。顔を上げると誰もいなかったハズのそこには玉藻先生が立っていた。
「玉藻…先生…」
「事情は貴女の生徒達から聞きました。不良達には借りがあるものでね。貴女の手伝いを代わりに依頼しておきました」
「貴様も手伝うんだッ、玉藻！」
玉藻先生に鋭いツッコミを入れたのは後から入ってきた鵺野先生で、その後をリツコ先生と鵺野先生のクラスメイト達がぞくぞくと入ってきた。
「みんな…」
「A先生水臭いですよ。こういう時ぐらい俺達を頼ってください」
「そうですよ。私だってこのメイド服を制作して頂いたんです。お礼ぐらいさせてください」
「鵺野先生…リツコ先生…」
「大丈夫！僕たちのお化け屋敷は一時閉鎖してきたのだ！だから、みんなで手伝うのだ〜」
みんなが一丸となって衣装の修復にあたる。その光景を見て胸が打たれる思いでいっぱいだった。
そして、みんなが手伝ってくれたおかげで衣装は無事時間内に修復しファッションショーも成功した。私は待っていてくれた生徒達、衣装の修復を手伝ってくれたみんなにお礼を告げた後、急いで玉藻先生の姿を探した。
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作者名：紫亜 | 作成日時：2019年10月12日 22時
