妖弧、玉藻(二頁) ページ2
「鵺野先生、いくらリツコ先生に憑いていたのが見えたからってリツコ先生の前では霊の話しは禁止ですって」
「つい…」
あの後、リツコ先生と別れて私達は共に自分達の生徒が待つ教室の道のりを歩いていた。リツコ先生の平手打ちを食らった頬を抑えて反省する鵺野先生を見るのも、もう何度目だろうか。
…そう、私達は日常の中に非日常的なものを持っていた。それは、霊が視えることだった。
ただ、鵺野先生はそれだけではない。左手には鬼の手を持つ。普段は黒い手袋をしていて分からないが、外すと鬼の手がそこから現れ今までにその力で妖怪や霊に取り付かれた沢山の生徒達を救ってきた。
それに比べ私は、霊が視えたり感じたりするものの鵺野先生みたいに霊を成仏させたり妖怪をやっつけたりする力はない。いや…昔は、この力を避けることに必死だったからだ。
万が一漏らせば人から気味悪がれ避けられ恐れられたりすることが怖かったから…。
だけど今は…同期の鵺野先生と出会って不思議なことにその力と向き合っている。同じものを抱えた者は私だけじゃないんだと、先生が手を差し伸べ励ましてくれたからだ。
私に、何か特別に出来る訳じゃないけど、私は…。
「そういえば、明日教育実習生の先生がいらっしゃってくるみたいですね」
リツコ先生にいつもの如くフラれ未だ項垂れる鵺野先生の気分を変える為、話題を変えてみる。明日はどうやら教育実習生の先生が学校を訪れるそうだった。
私はただ新しい先生との出会いに胸に期待を添えていた。
だが、それがまさか…人間に紛れ忍び寄る妖怪だとも知らずに…。
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作者名：紫亜 | 作成日時：2019年10月12日 22時
