【黒バス】恋をして【宮地清志】

【one】 ページ2

「おはよーございまーす」
まだ誰もいない体育館に、私―A―の声が響く。
準備しなきゃ、とゆっくり動き始める。
まず、ボールみがき。それに、コートのモップかけに、リングをだしたり、カーテンを開けたり…。
これを、選手の皆が来る前に終わらせておく。
それが、私の役目なのだよ！(
一年生のころは、こんなに仕事あるんだー、ってびっくりしたなぁ。
それで大体のマネが辞めちゃったんだっけ…。
「選手の皆が来るまで、時間あるなぁ…。」
一回、久しぶりにやってみようか。
バスケットボール。

私は、体育館シューズから黒とオレンジのバッシュに履き替え、準備体操をした。

「うわぁ、以外と高く見える！」

数年前まで、シュートを打ってきたバスケットリング。
私は、ウォーミングアップとして、ドリブルシュート(レイアップ)を左右で15本ずつ決めてから、
ドリブルの練習をした。
普通のドリブルから、青峰みたいな変幻自在のドリブルまで。
でも、青峰みたいなドリブルはあまり好きじゃない。
ストリートバスケは、ストリートバスケだし、公式戦とかで使うものじゃ無いと思うんだよね。
それでドリブルに飽きたら、壁相手に、ツーメン。
秀徳高校は伝統ある高校でボロ…じゃなかった、歴史があるし、壁が壊れたら嫌だし、止めておいた。


「もっかい、ドリブルしよっかなー」

そう言い放ち、私はまた、ドリブルを始めた。
ダムダム、と響き渡るドリブルの音。その音がとても、心地よかった。

？「おはよーございまーっす」

……。ドリブルに集中しすぎて、気にしてなかった。
どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう

見られた。それも、先輩に。

？「は？お前…。バスケ、出来ないんじゃっ……！」

謝らなきゃ。できないって嘘ついてた事、謝らなきゃっ…！

「ごめんなさい、ごめんなさいっ、嘘なんかついてごめんなさいっ！」

ただ、ぽかんと私のことを見る、先輩。
昨日の家での出来事が、フラッシュバックする。

「ぁ、やだっ…！痛い、痛いよぉ！ごめ、なさい、ごめんなさいっ」

ごめんなさい、ごめんなさい、と言いながら、ぼろぼろと涙を零す、私。

？「っ…！おい、Aっ！しっかりしろ!!」

先輩は心配して、私の肩を掴んでくれた。のに、私は―――――。

「ひっ…！」

先輩の手を、払いのけた。
その時の先輩の驚いた顔が、あの子のような顔をしていた。

そのまま私は気を失った。

最後に見えたのは、蜂蜜色の髪色だった。

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