人生万事塞翁が虎─14 ページ16
敦side
とある倉庫の中───────
明かりはつけず、窓から指す月の光が中を薄く照らす。月の光、といっても雲に隠れているためそこまで明るくはないが
人影が漸く分かるくらいの暗さであるのに本を読んでいるのは、太宰治という男だ
そして、Aちゃんは僕と太宰さんの中心ぐらいのところで月を眺めている(らしい)
ちなみに、太宰さんが読んでいる本は『完全ジサツ読本』
この本、本屋で売って大丈夫なのだろうか
げっ…と少し引きつつも、虎が本当にここに現れるのか尋ねる
太宰さんは本を見ながら、本当だよ、と答えた
しかし、それでも不安なものは不安である
じっと太宰さんを見つめていると太宰さんは本を下ろしこちらを向いた
太宰「心配いらない。虎が現れても私の敵じゃないよ。こう見えても武装探偵社の一隅だ。それにいざとなれば、彼女が弓で倒してくれるらしい」
Aちゃんの方をちらりと見ると彼女はコクりと小さく頷いた
僕とは対照的な二人に少しだけ自分が惨めに思えた
「すごいですね、自信のある人は…僕なんか孤児院でもずっとダメなやつって呼ばれてて……こんなやつが野垂れタヒんだって…いや、いっそ虎に喰われてタヒんだほうが…」
云えば云うほど惨めに思えてくる
『敦、私はそうは思わないぞ』
凜とした声が倉庫内に響く
女の子にしては少し低めの声
『もし、敦がその程度の価値しかない人間なのだとしたら』
「……したら?」
彼女は僕の目の前にくると深く深呼吸をした
そして、恐る恐る仮面をはずしたのだ
「!!」
その素顔はまだあどけなさの残る少女で
月光に照らされて輝く金色の瞳はなにか濁ったものが見えて
その表情は悲しげでどこか諦めたようなそんな笑みだった
『私はもうとっくにこの世に存在などしていない』
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素敵帽子くん - 続編へ! 話すなら#2でェ!! (2020年7月7日 8時) (レス) id: a7283ddb7a (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子くん - 無継さん» ありがとうございます! いま、急展開です。 (2020年7月7日 8時) (レス) id: a7283ddb7a (このIDを非表示/違反報告)
無継(プロフ) - 素敵帽子くんさん» はい。設定が細かくてここまで設定を細かくできて凄いなぁ。って思いながら読んでました (2020年7月5日 19時) (レス) id: fbd5b2b374 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子くん - 無継さん» いや、読んでくださいました?? (2020年7月5日 19時) (レス) id: a7283ddb7a (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子くん - 無継さん» 私の 俺は君に惚れた。 読みました? (2020年7月5日 19時) (レス) id: a7283ddb7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無継 | 作成日時:2020年4月28日 19時