48…S ページ9
身を翻して走り出すと、樹々の間に飲み込まれ、あっという間に視界から消えていった、智くんの後ろ姿
彼の足なら、すぐにでも森を抜けてしまえるだろう
もし仮に、途中で追手に出くわしたとしても、きっと難なく虹の向こうへ辿り着いてくれるはずだ
「いってらっしゃい、智くん」
智くんの手に握られていた右手が、今もまだ熱を帯びている
そして僕の手の中に残された、青い輝きをきゅっと握りしめた
智くんを縛り付けていた忌々しい宝石も、その意味を失った今となっては、ただの石ころに過ぎない
それでも手放さずにいるのは、これが唯一、智くんの存在を感じることができる物だからだ
「・・・それから、ごめんね」
ぽつり、こぼれた言葉
智くんの耳には決して届かない、届けるつもりもない言葉
.
.
暫くすると、雨が止んだ
大小無数の雫に濡れた樹々が、陽の光に反射してきらきらと輝いている
穏やかな風に雫を散らしては、それすらも美しくきらめいている
そして白い空間の中から、僕はじっと空を見つめ続ける
.
やがて聞こえてきたのは、徐々に近づく、複数人の足音
通路から反響する声は、いくつもの怒声が混ざり合っていて、うまく聞き取る事は出来ない
智くんが逃げる前に気付かれなくて良かったと、胸を撫で下ろしながら、僕はそれを背中で聞き続ける
目の前にあるこの小さな窓から外へ逃げることも出来ず、ぎゅっとシャツの胸元を握りしめながら、ただただじっとその時を待つ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 335人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゅり(プロフ) - きよさん» きよさん、最後までお付き合い頂きありがとうございました！今作中ではハッピーエンドへ繋げられなかったので、次章では大団円目指して頑張ります笑 コメントありがとうございました。 (2020年10月11日 19時) (
レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - まりもさん» まりもさん、コメントありがとうございました。まりもさんの毎日の楽しみになれていたなら、嬉しい限りです。次章も毎日更新目指していますので、また楽しんで頂ければ幸いです。ありがとうございました！ (2020年10月11日 19時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - 紅葉さん» 紅葉さん、はじめまして。コメントありがとうございました。最後まで楽しんで頂けたようで、嬉しい限りです。次章も公開しましたので、是非そちらにもお立ち寄り下さい！ (2020年10月11日 19時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - はるさん» はるさん、コメントありがとうございました！最後まで楽しんで頂けて、作者冥利に尽きます(^ ^) 次章にもお付き合いいただければ幸いです！ (2020年10月11日 19時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - しゅりさん、お疲れさまでした。二人の再開を願っていましたが、神の存在は偉大なのですね。永遠の命(？)でも大切な人がいなければ辛いだけですよね。落ち込みましたが続編があるということで、生まれ変わりの智くん！と妄想が膨らみました(笑)楽しみに待ってます。 (2020年10月7日 19時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しゅり
| 作成日時：2020年9月19日 18時
