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ぐるぐる悩む僕を置いて、智くんの話は続く
「ここに来てからはさ、こいつがある以上無理だって分かってたけど、でも、なんとか逃げ出せないかなって。・・・ずっとずっと、そんなことばっか考えてた」
首飾りから手を離して、でもな、と小さく続ける
「決心が付いたよ。俺は唄い手として、ちゃんと役目を果たす。やっと、その覚悟が出来た」
「っ、でも!そんな物に従って、本当の気持ち押し殺して、それで良いなんて、そんなわけ無いよ!」
さっきまでと違って、まるで付き物が落ちたみたいに穏やかに話す智くんに、僕は少しだけ恐怖心を覚える
だって、初めてだった
僕の前で、あんなにも泣いて、泣き叫んで、嫌がっていたのに
村のみんなにも、家族にも、もう会えなくなるって、逃げ出したいって、そう叫んでいたのに
あんな智くんの姿を今まで見た事なんて、一度だって無かったのに
「寂しいし、悔しいけどさ。でも、だからこそ、かな」
「なんで・・・」
「正直、今もアポロの為だなんて思っちゃいねえよ。・・・ただ、この国を守る為なら。父ちゃん母ちゃん達や、学校のみんなを守る為なら、やる意味があるんじゃねえかなって」
「っ、でも!」
それは、本当に智くん自身を押し殺してまで、やらないといけない事なのだろうか
他の誰でもなく、智くんじゃないとだめなことなのだろうか
だって、智くんがこのまま唄い手としての義務を果たすと言うのなら
僕とはもう、会えなくなるってことだ
二人で一緒に学校に通うことも、歌を歌うことも、下らない話で笑い合うことも
もう何も、出来なくなるってことだ
.
心に浮かんだその言葉を、声に出すよりも前に、智くんが口を開いて
「翔くんの、おかげだよ」
「え・・・」
僕、の・・・?
.

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しゅり(プロフ) - きよさん» きよさん、コメントありがとうございます! 翔くんについつい辛い役回りをさせてしまいがちで、申し訳ない限りです。 やっとこさ移行が完了しましたので、是非またお立ち寄りいただければと思います(*^^*) (9月22日 18時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - しゅりさん、お疲れさまです。お話し楽しく読ませてもらっています。翔くん健気すぎますね。身代わりになったとき智くんの気持ちを思うと辛いです。ハッピーエンドになると嬉しいですが、続きを妄想しながら更新お待ちしています。 (9月19日 14時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - あかりさん» あかりさん、コメントありがとうございます!一応金曜日頃までは更新予定ですので、引き続き足を運んでもらえたら嬉しいです(*^^*) 数日お休み頂いたら、また毎日更新頑張ろうと思いますので、是非楽しみにしていて下さい! (9月16日 21時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
あかり - 毎回更新されるのを楽しみにしています。移行のためしばらくお休みされるのは残念ですが、待つ時間も楽しみたいと思います。 (9月16日 14時) (レス) id: 43ef596bac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅり | 作成日時:2020年8月30日 16時