over the rainbow ＊OS＊

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「気分でも悪いのかしら？声が全く出ていないわね。やる気がないのなら、今日はもう下がってなさい」

「はい・・・すみません」


授業中もどこか上の空で、先生から注意を受けるのも、今日だけで何回目だろう

せっかくの歌の授業も全然集中出来ず、クラスメイトからの視線を一身に受けながら、後ろの方に下がって、そのまま座り込んだ




僕が先生に教えてもらってから三日後に、智くんが今年の唄い手に選ばれた事が、学校の生徒へ向けて伝えられた

これまでに前例がない選出に、学校中が智くんの話題で持ち切りだった


三年生達は、悔しそうにしながらも、妥当な結果だと受け入れていて

智くんのクラスメイト達は、拍手喝采で智くんの事を称えていて

僕のクラスメイト達は、ひどく興奮しながら、自分達も頑張ろうと決意を新たにしていた




そんな祝福と喜びの空気の中で、僕だけが一人、悲しみと混乱の渦に取り残されている



.




あの日から、今日で五日目

あと二日もすれば、智くんは聖域に行ってしまう




この数日の、智くんのいない、一人きりの学校の行き帰り

二人でおしゃべりしていたらあっという間の距離も、一人だととても長く険しい道に思えて

話したいことも、伝えたいこともたくさんあるのに、一番聞いてもらいたい相手だけが、ここにいなくて



智くんが、いない



ただ、それだけなのに




「元気に、してるかな・・・」



まるで心にぽっかり、大きな穴が開いてしまったよう

少しでも考える時間が出来ると、智くんのことを思い浮かべてしまって、また涙がこぼれそうになる



この心の空洞を埋める術を、僕は知らない

そしてそれは、智くん以外の何かで埋まるような、そんな安っぽいものでもないのだ

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