Cluster-Amaryllis〜クラスターアマリリス ページ34
あれから僕は司くんの相談を終え、その他諸々の仕事を片付けたら、もう午後7時だった。
勿論弟妹はとっくに帰っているので、一人寂しく帰路についていた。
夜は風が冷たい。月は白く儚い三日月の形をして浮いている。僕は早足で歩道を進んだ。
その傍らで、街路樹の黒い葉がさわさわと音を立てた。
こんな静かな夜はあの神社を思い出す。僕らの家の裏にある古風な神社。
僕らの家は洋風の邸宅なので、この対立的な印象が近所の方々のちょっとした話の種になっている。
実は、その裏の神社はシュトラのメンバーだった
──今なら境内の掃除中かな。
僕は進行を、家に帰るのにいつも通る道とは一本だけ違う道路へ変更した。
鬱蒼とした木々に埋もれるように仁王立ちした鳥居を潜ろうとしたが、一度足を止める。
そうだ、前に影羽が教えてくれた。
本殿へ続く石畳の真ん中は、神様が通る神聖な道なのだ。僕ら人間は端側を通行しなければならない。
それを教わった時、それならAは真ん中を通っていいのかと純粋に質問したところ、影羽は困ったように俯いてしまったんだったか。
僕は神様ではないので、極力端を歩いた。
「……ジゼル………?」
ふいに名を呼ばれてそちらを向くと、箒を持った影羽が木陰から出てきた。
赤と白の和風ワンピースみたいな。
ミコ?の正装なんだとか。仏教は全く分からないけどとても可愛い。
足下には落葉が積もっている。やはり掃除をしていたのか。
「あ、久しぶりだね、影羽」
「…………」
暗くて顔は見えなかったけれど、笑っていたと思う。影羽は頷いて、僕の傍に来た。
影羽は感情表現に乏しく、最低限の言葉も喋らない子だった。話は遡って、中学の入学当初も誰とも交流しようとせず、はっきり言って浮いた存在だった。
だが、容姿は美しく中性的。
長い前髪の下に麗しい瞳が隠されていることを僕は確信していた。あと、絶対に女装が似合う。絶対に。
僕はそんな影羽に興味があって、一度話しかけてみた。当然返事は返って来なかったが、来る日も来る日も話しかけ続けた。するといつの日からか頷いてくれるようになった。
そこから更に心を開いてくれ、控えめながら笑顔が見られるようになった。
今も口はあまり開いてくれないが、表情や仕草など様々な根拠をもって、影羽が言いたい事や思っている事を理解出来る。
「影羽に会いたくなって来たんだ」
そう言うと、影羽は箒を放り出して僕をぎゅっと抱き締めた。
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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……!ご指摘ありがとうございます! 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。「混沌」でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - 「悩み」の話の「敬人」が「敬斗」になってますよ(コソッ面白かったです。これからも頑張ってください! (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります!(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流離いのsecret | 作成日時:2019年5月2日 14時