一日目終了 ページ26
あれから、3-Bで有意義な自習をしている人は極僅かしかいなく、ほとんどの生徒は友人との談笑タイムを楽しんでいた。
僕は後者の方で主に弟妹の話を聞いていたが、途中で前者に申し訳なく思い、自習の手伝いを申し出た。
しかし全て空振り。大丈夫です、と返答されるのがオチだった。
みんなにフラれてしまったと笑って弟妹の元へ帰って行ったら、弟はみんな恐縮してるのだと肩をすくめて言った。
僕は自身が恐れられている事を知った。
その日の夜。
今日はなんとも濃い一日だったと振り返り、自室でただ何をするのでもなくベッドの端に座り目を瞑っていた。
肩と胸に重さを感じる。新たな環境に気疲れしたのだろう。
ボーッとした頭を切り換えるために愛蛇の毒液を直接口に含んだ。
舌がピリピリと痛み徐々に体が熱くなる。
少し経ったら毒の効果は引いて身体が軽くなり、そこで僕はゆっくりと目を開いた。
休み終わった僕に気付いたヴィルクルスは尻尾側の半分以上を絨毯に残したまま、僕の腕に3周巻き付いて、その白い頭を突き出した。
主人の体調を気遣える蛇。なんて良い子なんだろうね。
ヴィルクルスは細長い舌をチロチロ出して、甘えているようだ。僕がその顎を人差し指で撫でてあげると、嬉しそうに首にまで絡み付いてきた。
こんな可愛らしい動物を冷血と忌み嫌うなんて(一部を除いて)人間はどうかしている。
冷血。身体が冷たいのは、蛇が爬虫類で変温動物であるからであって、当然の事実なのだ。
嫌う理由にはならない。
全く、人間の考える事は分からないね？ヴィルクルス。
そう、ヒトというのは難しい。
人間の思考や感情がよく理解出来ない僕に、心理療法士なんて務まるのだろうか。
一日経って疑問に思った。
別に僕に感情が宿っていないわけではないが、それのほとんどは僅かな揺らぎでしかない。
少しだけ楽しいと思ったら周りに合わせて大袈裟に笑い、少しだけ悲しいと思ったら俯き顔を曇らせ、少しだけ嬉しいと思ったら人当たりの良い微笑を浮かべる。
僕が培ってきた処世術。
「僕は、本当に人間なのかな？」
ヴィルクルスは何も答えなかった。
人間でない遠い星の生物でも、頭脳明晰且つ観察力があれば周りに溶け込んで生活することなど容易いのではないか。
そんな人外じみた僕が純粋な人間の心を癒すなんて不可能なのではないか。
「……まぁ、良いか」
僕が何であろうと、あの学院に行けば女装の似合いそうな美男子に逢える事は明白だ。
次も、頑張ろう。
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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……！ご指摘ありがとうございます！ 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (
レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。｢混沌｣でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ｢悩み｣の話の｢敬人｣が｢敬斗｣になってますよ（コソッ面白かったです。これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます！頑張ります！(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：流離いのsecret | 作成日時：2019年5月2日 14時
