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親猫 ページ12

「ね、ねぇ……名前は?」
頬に仄かな赤みが差した凜月君は身を乗り出し、おずおずと僕に名を訊ねた。
その頬の赤は、暑さの類いではないようだ。

「僕は青海ジゼル。新しくスクールカウンセラーとして勤務するんだ。よろしくね」
「ジゼル、さん……よろしく」
凜月君は、はにかんだ笑顔をし、セーターの裾をきゅっと握った。

先程見たキャッチフレーズの『眠れる冷笑の黒王子』とは何なんだろうか。少なくとも僕には眠れる可愛い黒猫くらいにしか見えない。
ああ、あれか。冷笑というのはキャラ付けとかいうやつか。
僕もアイドルの活動時だけ、今みたいに優しい王子様系を演じていたものだ。

「悩み事とかあったら、何でも僕に相談してね」
僕は隣の凜月君に微笑んだ。
すると、少し不服そうな声がとんできた。
「俺が相談シニ来たんダケド」
シークが口を尖らせ、僕を上目で睨んでいた。
弟の嫉妬。
可愛い。
「あ、ごめんねシーク。良いよ、聞かせて」

シークは拗ねたように唸ったあと、一息吐いて、口を開きかけたその時、

「おい凜月、何でいきなりこんな場所に呼びつけ……て……」
赤紫色の前髪を上げた、凜月君の友達と思われる子がスマホ片手に扉を開いた。
シークがその子を引き攣った表情で見ていた。
僕は本日3人目である新たな出会いと、タイミングの悪さに苦笑した。

刹那、彼の時が止まる。
凜月君と同じように僕を凝視して、まるで石化の呪いにかけられたように指一本さえ動かなくなった。
ちゃんと息してるかな。心臓動いてるかな。
少し不安になった。

「ま〜くん、固まってるよ」
悪戯な弧を描く唇。
凜月君が彼を呼んだのには、何か魂胆がありそうだ。
「……はっ」
良かった。動いた。

この、ま〜くんと呼ばれた青年は、気を取り戻して頭を横に振った後、凜月君の首根っこを掴んで立ち上がらせた。
この子は凜月君の親猫さんなのかな。

「凜月、またこんな場所で寝てたのか、いい加減授業出ろって!しかも先輩方の邪魔になってるだろっ!」
「え〜……。しょうがないなぁ、ま〜くんが言うなら出るよ。そして寝る」
「また留年スルんじゃナイ?」
「あんたにだけは言われたくない」
凜月君は溜め息をついた。
そんな彼にシークは鼻で笑い、長い舌を出して見せた。

軽妙なやりとりには毒気が含まれていたが、僕からすれば可愛らしいものだ。
僕がもし留年するんじゃね?と言われたら、『一学年下の子達にお前の黒歴史暴露してやるわ』くらいの返しをするだろう。

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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……!ご指摘ありがとうございます! 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。「混沌」でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - 「悩み」の話の「敬人」が「敬斗」になってますよ(コソッ面白かったです。これからも頑張ってください! (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります!(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:流離いのsecret | 作成日時:2019年5月2日 14時

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