君は僕に似ている【白河勝之】

Episode1.嫉妬の華 ページ44

「ねぇ、聞こえてる？」

「聞こえて…ます…！」

「なんであんな事されたの」

「…それはっ……」


今の状況を説明しよう。
只今私は、白河先輩により壁ドンされている。

なんでこんな事になっているのか。

それは、数時間ほど前に遡る。


数時間前、私と白河先輩は2人で延々と歩いていた。

特に行くところもなく、理由もなく。
なんとなーく散歩的な感覚だった。

それで、延々と歩いて辿り着いた所が公園だった。

ブランコや滑り台、砂場。普通の公園より遊具が充実していて、かなり広めの公園だった。


そこに、幼い兄妹がいた。


私達に似てる、というのが第一印象。

妹の方は、兄にくっついて離れない。
対する兄は、妹の事を気にかけている。

何かを探しているのだろうか。困ったような表情をしている。


「どうしたの？何か探し物？」

「え、はい…妹が小さい人形をここら辺で落としちゃったみたいで…」

「私達で良ければ一緒に探すよ？いいですよね、先輩？」

「あぁ」

「ありがとうございます」


ここまではまだ良かった。問題はここから。

あの後、妹が失くした人形は見つかった。
小さな兄妹は、ペコペコと頭を下げていた。


「見つかってよかったね」

「本当にありがとうございます。ほら、ありがとうは？」

「あ…ありがとう…！」


頬を赤く染めてそう言った妹は、私のもとに来てぎゅ…と抱きしめてきた。

小さくて素直で、可愛らしかった。


「可愛い…」


それが原因だったらしい。

兄妹に別れを告げた後、背後では白河先輩がとても不機嫌な顔をしていた。

その時の私は、彼が何故怒っているのかが全く分からなかった。

腕を引っ張られ、部屋に連行され、今に至る。



要するに『嫉妬』というものだ。



「だから、そんな怒らないでください」

「…」


ダメだ。完全に嫉妬している。
まさか小さな子供相手に嫉妬するとは思ってもみなかった。

どうすればいいのか…。


この壁ドンされてる状況では、何をどうすればいいのかが分からない。

まずあまり動けない。


「もう…」


仕方ない。こんな嫉妬している先輩の為にやろうじゃないか。恥ずかしいけど。


そっと抱きしめる。
自分からこれをするのは多分これが初めて。

流石の白河先輩も驚いていた。顔をほんのり赤くして。


「これでいいですか…？」

「やだ」

「ええっ！？」

Episode2.寂しがり屋の妹→←あとがき

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