君は僕に似ている【白河勝之】

7.一夜 ページ8

「ん…」



目を開けば此処は、寮の中の一室。





「やっと起きたか」


「…あぁ、帰らなきゃ」


「馬鹿か」





目の前に時計が突き出される。
午前0時47分。電車は時すでに遅し。駅に着いた所で、終電には間に合わない。



やらかした。電車を逃したとか、今日は何処で一夜を過ごせというのか。





「今日だけ此処に泊まれ」


「でっでも、着替えとか持ってないです…！」


「俺の貸す」






この人は…気付いてすら居ないんだろうか。



数分後、白河先輩のを借りて、それを着た。着たのは良いんだけれども。



彼シャツというものが恥ずかしすぎて、頭がぐるぐるする。
少しだけ大きかったけれども、柊先輩のだと小さ過ぎるし、成宮先輩とかのは大き過ぎるのだろう。





「こ…これで…い…」


「…」




ダメだ…。


今の状況、部屋で白河先輩と2人きり。
それが余計に心を波立たせてるようで。




そんな時にちらっと目に入ったのは、ベッド。
ベッドが1つしかないという事は、あれを2人で使うという事。


途端に、消えていたはずの羞恥が再び襲ってくる。




「先輩っ…私、床で寝ます…」


「風邪引くからダメ」


「え、じゃあ…？」


「それしかないだろ…」


「うぅ…」





それしかないから諦めろという事で、いざベッドへ。




「っ…！！」




2人で1つのベッドを使っている状況。


白河先輩との距離が近すぎて、目を合わせる事すら出来ない。
背中を向けているから、目を合わせることは無いだろう。



肌寒い。





すると、後ろから抱きしめられる。
大切なものを守るかのようにそっと。




「寒くない？」


「あったかい…です」





私はゆっくり目を閉じた。





翌朝。




「ふあ…ぁ！？」




ちょっと待てなんだこれは。私何してたの？
白河先輩に抱きしめられてるって何が起きたの？！ていうかここどこ！！




朝から私の脳内は、異常にクルクルと回っていた。
白河先輩が目を開ける。






「あれ、なんで…？！」


「昨日終電逃しただろ」


「あ…」





それで服を借りて寝たんだっけ？
2人で1つのベッドに？





「っ！！！」




一気に顔が熱くなる。
寝顔とか見られたりしたら、私は間違いなく死ぬ。穴があったらそこに今からでも飛び込みたい。






「寝顔…」


「3回見た」


「…っ！！」




声にならない悲鳴を上げる。
朝から痴態を晒してしまった京華であった。

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