君は僕に似ている【白河勝之】

28.リア充(真) ページ30

「カルロス…ぶはぁ！」

「なんで…？！」


お腹を抱えて派手に爆笑なさってる柊先輩。
目尻に涙まで溜まっている。

それにしても何故…何故爆笑してるのか。

私達には理解不能。

まあでも、元気になったのなら良かったとして。


「知ってる？あの2人ね…」


成宮先輩が、良いものを見つけた子供のような顔で、私を見る。


「…え」

「ホントビックリしたよね！」

「そう、ですね…」


何故だろう。今すごく、心が痛い。


不安？不満？

怖いってだけ？


あ、リア充？それは爆散しなきゃ。


…柊先輩とカルロス先輩はギリギリ許す。


あと、はるちゃんは…もはや兄妹にしか見えないから兄妹って事にしておこう。






あの後、自然と柊先輩の幼馴染の話題になった。

野原綾という名前で、かなり男っぽかったとか。

そして、1年前までは稲実の野球部に所属していたらしい。性別を偽って。

しかし、1ヶ月もしないうちに学校全体にバレてしまい、退学を強いられた。

その時の野球部は、彼女に野球部にいて欲しいと願ったが、それは叶わなかった。

彼女の強さを認めていたからに違いない。

今は青道高校で野球部のマネージャーをしている。


…私も入学前までは、性別を偽って野球部に入ろうと思っていた。

だけどやめた。というか断られた。

そんな伝説があったからなんだろうけど。



片方しかつけていなかったイヤホンを両耳につける。

ぼんやりとした視界の中で曲を適当に選ぶと、あの曲が流れてきた。

私が1番好きな曲。


『君は僕に似ている』


サビの直前が特にお気に入りだ。

自らの意志で己を動かす事、それは決して楽ではない。けれども、それこそが自分で選んだ道なのだと。

私は…自分が決めた道を生きたい。

そう思う。


いつか、白河先輩にも聴いてほしいな。
先輩は、何て言うだろうか。



考えると鼓動が速くなる。

なんでこんなにドキドキするのかは分からない…けど。


イヤホン越しから、柊先輩のマシンガンボイスと、カルロス先輩の声が聞こえてくる。

柊先輩、すごく嬉しそうだ。

それならそれでいいんだけど…。


…まったく。

私はいつからこんなにおかしくなったのだろうか。

自分が自分じゃなくなってきそう。

どうかしてるな…私。


自分のこめかみの辺りを軽く叩いた。頭の中に白河先輩の後ろ姿が浮かんだ。


そんな訳ない、と否定してかき消した。

そんな事は絶対に有り得ないと自分の中で思い込んでいた。

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