【路地裏の百物語】浮世の沙汰は諸行無常【派生作品】 (ページ17)

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　極力紙を折らないように、それと内容を極力見ないようにしながら地蔵と達也は紙の山から沢子を無事救出することに成功していた。所要時間約十分。

「ありがとうございます、たたり地蔵さん、犬飼さん。助かりました」

　ふわりと笑う沢子に「相変わらずべっぴんさんや」と呟くたたり地蔵の傍ら、達也が片付けを手伝おうかと申し出る。

「いいえ。お気持ちだけいただいておきます。これは仲介者としてわたくしの役目ですし」
「……結構な量がありますけど、大丈夫ですか？」
「はい。頑張ります」

　力こぶを作って笑う沢子に、もう一度たたり地蔵は「べっぴんさんや」と呟いていた。だがしかし、達也の言う通りかなりの量があるのは確かなことで。流石にこの量を一人で片付けとなると日が暮れるどころか翌朝の日の出を拝むことになるだろう。

「景はんに助っ人してもろたらええんじゃないです？」

　となれば沢子と同じ仲介者の役をしている景に助力を求めればいい話。たたり地蔵はそう沢子に提案するが、沢子は困ったように笑って口を開く。

「景くん、今またエネルギー切れで」
「……あの人、ほんま自分に対して無頓着ですわ」
「ある意味集中力が凄いですね……」

　某所にてエネルギー補充中の景がくしゃみを一つしたとかなんとか。

「それで、お二方はどうされたのですか？」

　えっさほいさと散らばった報告書や資料を集めている沢子が邪魔のならないように端に寄ったたたり地蔵と達也に尋ねた。

「俺は何か依頼はないかと思って来たのですが……」
「ちなみに自分は付き添いみたいなもんです」
「あ、でしたらこちらの端末に大体の内容を書いておりますので」

　手を止めて、ポケットにはいっていたであろう端末を差し出す沢子。目を瞬き、そして差し出す端末(デジタル)と周囲に散らばっている紙(アナログ)を見て、二人は思う。
　どちらかに寄せればいいのに。
　ちなみにデジタルだとバックアップを確りとしておかないとデータが消えた時に悲惨なことになるので、こまめにバックアップを取ることをオススメする。
　達也が沢子の差し出した端末を受け取り、画面に表示されている今回の依頼の内容を見る。だが、背丈が足りないために背伸びをするたたり地蔵のために少し下げて見やすくしていた。
　今回の内容は三つ。近所のＬさんからの依頼、OLのＮさんからの依頼、中学二年生のＳさんからの依頼。振り分けはそれぞれＤランク、Ｄランク、Ｃランクとなる。