猫なで声に油断ならぬ。*M.A* (ページ32)

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「何も？ないけど・・」

すっとぼけてみたけど。

「ないわけない。ないならそんな顔してるはずないもん。」

少し頬を膨らませて少しだけまぁくんの顔。でも目は笑ってない。話してしまえば楽になるだろうけど・・

「ないってばぁ、もー！てかあれ？私すっぴん・・？」

「今頃？俺は全然気にしてなかったよ？Aさん変わらないんだもん♡」

「・・・やっぱり生意気。」

「フフ♡怒った顔も可愛いぃ♡♡」

肩にふざけて一発。大げさに痛がる雅紀くんがおかしくて自然に溢れる笑い。楽しければ関係なんてあやふやでもいいかも。そういう大人の付き合いでも・・モヤモヤと渦巻く不安を正当化するように何度も心のなかで繰り返して、必死で笑った。

エレベーターを降りてからも、雅紀くんの不可思議な行動は続いた。
部屋をなかなか見つけられなかったり、鍵を開けるのに手間取ったり、部屋の灯りがなかなかつけられなかったり、違和感ばかり。

私が言い出すのを待ってるのかな？
それとも言えない事情があるのかな？

そもそも、好きって言われて舞い上がってくっついてきといて、連れていかれる場所だってわかってたはずなのに。
今更不安になって、尻込みして、私はどうしたいんだろ。もう、わかんなくなってきた。

「Aさん。」

玄関に突っ立ったままの私の前に、雅紀くんがいつの間にか立っていて、また怖い顔してる。

「雅紀くん、やっぱり・・」

「全然隠せてない。」

「・・え？」

「翔ちゃんから連絡きて・・ようやくAさんの不自然な笑顔の訳がわかった。」

雅紀くんがスッと近づく。また誤魔化されちゃうのかなって思ったら、彼は玄関の扉を少しだけ開けた。