猫なで声に油断ならぬ。*M.A* (ページ23)

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そのまま二度と開くことのなかった扉。じっと見つめたままの私を、戻ってきた美那ちゃんはぎゅっと抱きしめてくれた。涙を流すべきは私なのに、美那ちゃんはまた泣きそうになってて。そんな可愛くてたまらない美那ちゃんを「ありがとう」って抱きしめ返した。

櫻井さんは私に平謝りしてたけど、櫻井さんが悪い訳じゃないから頑張って笑ってみせたのに、櫻井さんは怖い顔のままだった。

「休みましょ！先輩！！」

それもそのはず。自覚するくらい何事も無理をしなきゃ立っていられないほど、私は弱っていった。いくら嫌われたからといっても、櫻井さんというパイプは残ってるのに。『もう一度』とは思えなくて・・

美那ちゃんが作ってくれた休みをただ無駄に過ごすことは嫌で。
今まで出来てなかった窓とか、壁とか、細かい場所の掃除やら。
服や食器の断捨離やら。
気づけば夕方、なんてざらで。そういえば何も食べてない、なんてのもざら。

そんな私を心配して仕事帰りに美那ちゃんが毎日顔を見に来てくれて。そんな日が五日くらい続いたある日、ついに・・いややっとかな？美那ちゃんに冒頭の言葉で叱られた。

「家に閉じこもってるからダメなんです！」ってさらに叱って、すっぴんの私を外へと連れ出した。
連れてこられたのはまたあの店。

「いらっしゃい♡」

迎えた店主の憎たらしい笑顔にイライラ。なんで私が連れ出される場所ってここばかりなんだろう。

「美那ちゃん・・」

「ダメです！座ってください！店長さん、いつもの！！ふたつ！！」

店内はほぼ満席。美那ちゃんの大きな声に皆が視線を向けたけど気にしたのは私だけ。美那ちゃんは何事もなかったかのようにカウンターへ。
なぜかここのムカつく店主と談笑中。疎外感を感じて、飲みたくないお冷やを一口飲んで下を向いた。