猫なで声に油断ならぬ。*M.A* (ページ3)

今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:23,468 hit

＊ページ3

「まぁくん・・なの？」

抱きしめてた腕を解いたイケメンは、にっこり笑った。黒目がちの瞳をみえなくなるくらい細くして、小さく頷いた。

こんなに非現実的なことを、こんなにも素直に信じるなんておかしいと思う。でもなぜか不思議と納得してる自分がいた。

「どうして・・？」

聞きたいことはたくさんあるけど、うまく言葉にならない。
それを感じたらしく、まぁくんと名乗ったイケメンは微笑んだまま優しく頭を撫でてくれてる。

「Aさんを待ってたのはいつもと変わらないでしょ？だから、良しとしない(笑)？」

ここへいつものように来たんだから、容姿は関係ない・・ってこと？
そう言いたい？

「もう帰らなきゃ。」

立ち上がった彼は、当たり前だけどいつもよりずっと大きい。人間でも、大きい方かも。手足も長くてスラッてしてるし、まるでモデルさん。

「もう・・帰っちゃうの？」

真っ黒なコートがゆっくり振り返る。さらさらの黒髪も揺れる。私よりツヤツヤだし、綺麗な髪。

「どうして今日はそんな事言うの？」

「もっと・・話したいなって。」

彼がしゃがんだままの私の前に、同じようにしゃがむ。困ったように微笑んだ顔もやっぱりイケメン。

「ごめんね？約束があるんだ。」

「何の？」なんて聞けない。猫の時だってふらりとやって来て、ふらりと帰ってた。喋れなかっただけでどこか寄るところがあってそうしてたのかもしれない。だからって、私も私だ。彼の姿が変わっただけで困らせることを言うなんて。

「また来るね？おやすみ、Aさん♡」

そっと私の頭を撫でて、にっこり微笑むと振り返ることなく階段を降りていった。こっそり階下を覗いてみたけど人影はなくて、足音すらしなかった。

まぁくんと同じ。
人間の彼もふらりと消えた。