猫なで声に油断ならぬ。*M.A* (ページ17)

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＊5＊展開。ページ17

「こんな作戦、通用するのかな？」

美那ちゃんのいなくなった部屋は、耳鳴りがするほど静か。まだ昼間だからいいけど、陽が落ちてきたら寒くなるし。そもそも陽が落ちるまで居座るつもりなんだろうか。

美那ちゃんの作戦はこうだ。
まぁくんを部屋に上げた日。忘れていった紙袋に入ってた元カレのコート。それは綺麗に畳まれていたけどにおいは変わってた。
そう、抱きしめられた時に感じたまぁくんのにおい。

それを自称ものすごい嗅覚の持ち主の美那ちゃんが探し出すっていう作戦。

『当てずっぽうに先輩のアパートに来た訳じゃないと思うんです。きっとこのアパートに知り合いがいるんじゃないかなって・・』

強ち間違ってないかも。
汚れた黒いコートも次に会うときには綺麗になってたし、貸したコートも綺麗になってた。どこかに“家”と呼べる場所があるはず。その手がかりが、ここへ残ってたらいいんだけど。

美那ちゃんからの連絡は『変わりありませーん』ってメッセージと変顔ばかりで。気づけばもう窓の外は真っ暗。もうやめようって伝えにエントランスへ降りたら、美那ちゃんからの着信。

「もしもし？どうした・・え？」

階段を降りたところですれ違った人。
その人からまぁくんと同じにおい。反射的に振り返って追いかける。美那ちゃんが後ろで叫んでる。

「すいません！！」

腕を掴んだその人は、目をまん丸にして驚いてる。そりゃそうか。知らない女の子二人に追いかけられてるんだもん。

「お聞きしたいことが・・あって・・！」

「はい・・」

「“まぁくん”て男の人、知り合いじゃありませんか？」

とんでもない状況でも、その人は困ったように微笑んで「助かりました、声を掛けていただいて」不思議なことを言った。