蓼食ウ虫モ好キ好キ*KN*3 (ページ2)

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お互いの気持ちが通じあってから、和也の家に行って以来。
和也が海外出張やら、社長同士の懇親会やらで、会えない日が続いてる。

松本さんに毒づいてる和也が浮かぶ。
よくもあのわがまま社長の秘書なんてやってられるよなぁなんて思いつつ、自分も大して変わらない存在でもあるな、なんて苦笑い。

今日も遅くなるって行ってたから、冷蔵庫にあるもので飲もうと冷蔵庫を開けたら。
肝心のアルコールがひとつもなくて。
結局近所のコンビニでビールとおつまみを買った。

元気なバイトのお兄さんに送り出されて、外へ出ると。
とんでもないどしゃ降り。
傘は持ってないし、通り雨と信じて止むのを待ってはみたけど、一向にやむ気配がない。
ぬれる覚悟で店を出たら。

「送っていこうか？」

すらりと長い腕が、傘を差し出した。

「・・雅紀くん？」

「やだなぁ、警戒しないでよー。アパートに着いたらすぐに帰るよ。」

「・・どうして、ここに？」

「仕事帰りなんだ。ここ、俺の店だから。」

「・・え？」

雅紀くんが指さしたのは、私の後ろ。
振り返ったら、さっきのバイトのお兄さんが私の後ろに視線を送ってから驚いた顔をしてる。慌てて頭を下げる彼が、出会ったばかりの頃の雅紀くんと重なる。

「ここのオーナーやってるの。」

どしゃ降りが少し落ち着いてきたのか、雨音が静かになる。でも、まだ傘なしじゃ一瞬でずぶ濡れだ。

「Aちゃん、とりあえず入ってもらってい？」

「・・え？でも、」

「だいぶ目立ってるから、お願い。」

お客さんとか、通行人の人が立ち止まってこちらをみてる。痴話喧嘩か？なんて声も聞こえる。これじゃ雅紀くんにも、お店にも迷惑がかかりそう。

「じゃあ、お願いします・・」

高い場所にある傘が新鮮。
綺麗な横顔も、細くて長い手も、和也とは全然違う。

「大丈夫？」

水溜まりを避けるように、肩を引き寄せられる。不覚にもドキッてする。

どんなに辛い別れ方をしたとしても、好きだった人には変わりなくて。
薬指にあった指輪がないことに気づいたことも。
あっという間に心を許してしまった原因なのかもしれない。