仮の彼氏。(今吉翔一)

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彼が”はぁ、”と小さくため息を付いた。

わかってる。

今の私は凄く面倒くさくて可愛くない。

(まぁ今じゃなければ可愛い時があるのかと聞かれたら、いつでも私は可愛くないけれど)

今吉君と私の友達(女)が、私よりも仲良さげに、楽しげに、話ていたとしても、

今吉君が私の友達(女)と、私の目の前で私にはわからない秘密の話をしていたとしても！！

拗ねるのは駄目。

万が一嫌な気持になってしまってる事を気付かれて、

今吉君に”やきもち”と、からかわれても、

怒るのは駄目。

好きな人と付き合えるんだから、

もう一度付き合える事になったんだから、

彼の隣でニコニコとしてなきゃ…

…て、頭ではわかってるんだけど、

私にはそれを実行できる器量がない。

だから私は彼の事が好きであれば好きであるだけ、

彼の隣をぶっさいくな不機嫌面で歩いてる。

本当は、

カフェから外に出て、

二人で暫く歩きながら話してたら

段々不満や苛立ちも治まってきたから、

普通に楽しい会話とかしたいんだけど、

一度怒ってしまうと

機嫌を直すのが何だか妙に恥ずかしい。

子どもっぽいだろうけど、

何だか負けた気がするし、

(別に勝負してたわけじゃないんだけど)

今吉君の事だから

機嫌を直した私を見て

”なんや、やっぱりAちゃんわしと二人きりやなかったから拗ねとったんやな”

とか言ってからかってきそうだし。

とにかくこのまま急に機嫌を直すなんてできないのだ。

ばかばかしいけれど。

思わず今吉君に次いで自分まで「はぁ」と、ため息が漏れた。

散々な初デートだ。

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